自由電子フェルミ気体とは

/物性論

自由電子フェルミ気体

自由電子フェルミ気体とは、パウリの排他律に従う自由電子気体です。自由電子フェルミ気体は、以下の近似をしたモデルです。

    • 電子同士の相互作用を無視する。
    • イオン格子は一様な背景電荷とみなす。
    • 電子は箱の中を自由に運動する。

フェルミ準位

フェルミ準位 ${\bf n}_F$ とは、絶対零度で(エネルギー準位を下から詰めてたときの)電子が占有する最も高いエネルギーです。フェルミ準位でのエネルギー $\epsilon_F$ は以下で表されます。(①の導出

$$\epsilon_F=\frac{\hbar^2{\bf k}_F^2}{2m}  -①$$

1次元の場合、フェルミ準位と波数の関係は以下になります。

$$k_F=\frac{n_F\pi}{L}$$

パウリの排他律により、1つの量子状態には1個の電子のみが占めることを許されています。但し、1つの量子数に対しスピン向きの上下が縮退していると考えると、フェルミ準位と電子数 $N$ の関係は、$2n_F=N$ となります。

①の導出

シュレディンガー方程式を、一定の境界条件のもとで解くと、離散的なエネルギー準位 $\epsilon_n$ を持ちます。以下は、ポテンシャルエネルギーを無視した系を考えます。

$$-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\phi_n=\epsilon_n\phi_n  -(1)$$

1次元の場合、境界条件を $\phi(0)=\phi(L)=0$ とすると、半波長の整数倍が $L$ となるような正弦波であれば、(1)が満足されます。この整数倍を表す $n$ は量子数と呼ばれます。

$$\phi_n(x)=A\sin{k_nx}  -(2)$$$$k_n=\frac{2\pi}{\lambda_n}$$$$\frac{n\lambda_n}{2}=L$$

(2)を(1)に代入すると、エネルギー準位は以下になることが分かります。これは自由粒子の運動エネルギーであり、波数 $k$ が大きいほどエネルギーが高くなります。

$$\epsilon_n=\frac{\hbar^2k_n^2}{2m}$$

フェルミ準位のエネルギーを $\epsilon_F$ とすると①が得られます。

状態密度

状態密度とは、単位エネルギー当たりに存在する量子状態の数です。波数空間の体積 $V$($=4\pi k_F^3/3$)の球内にある状態数を $N$ とすると、フェルミエネルギーは以下になります。(②の導入

$$\epsilon_F=\frac{\hbar^2}{2m}\Big(\frac{3\pi^2N}{V}\Big)^{2/3}  -②$$

これにより、状態密度は以下で表されます。尚、最後は⑤を使っています。

$$D(\epsilon)\equiv\frac{dN}{d\epsilon}=\frac{V}{2\pi^2}\Big(\frac{2m}{\hbar^2}\Big)^{3/2}\sqrt{\epsilon}=\frac{3N}{2\epsilon}$$

状態密度は、次の恒等式が成り立ちます。ここではフェルミ分布で、$T=0$ では階段関数になりますが、温度が上がるとフェルミ準位近傍だけぼやけた形になります。

$$N=\int_0^\infty D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon=\int_0^{\epsilon_F} D(\epsilon)d\epsilon  -③$$

②の導出

3次元の場合の周期的な境界条件を、

$$\phi(x+L,y,z)=\phi(x,y+L,z)=\phi(x,y,z+L)=\phi(x,y,z)$$

波動関数は進行平面波となります。${\bf k}$ は波数ベクトルと呼ばれています。

$$\phi_{\bf k}({\bf r})=e^{i{\bf k}\cdot{\bf r}}$$$${\bf k}=\frac{\pi}{L}{\bf n}  (n=\pm1,\pm2,\cdots)$$

これより、波数ベクトルは体積要素 $(2\pi/L)^3$ 当り1つ存在するため、半径 $k_F$ の球体 $4\pi k_F^3/3$ 内に存在する状態数は以下になります。尚、$V=L^3$ と置いています。

$$N=2\frac{4\pi k_F^3/3}{(2\pi/L)^3}=\frac{V}{3\pi^2}k_F^3$$

右辺の先頭で “2” を掛けているのは、各状態にはスピンアップとスピンダウンの2個の電子が入るためです。これより、フェルミ球の半径は、

$$k_F=\Big(\frac{3\pi^2N}{V}\Big)^{1/3}$$

これを①に代入すると②が得られます。

電子気体の比熱

電子気体の比熱は、温度変化に対する電子気体の熱エネルギーの変化の比で表されます。電子気体が熱せられた場合、古典論でのエネルギー等分配則では、どの電子も $k_BT$ 程度のエネルギーを得ると考えますが、実際はフェルミ面付近の電子のみにエネルギーが付与されます。

$N$ 個の電子気体の温度を0からに熱したときの熱エネルギーの増加は、

$$\Delta U=U(T)-U(0)$$$$=\int_0^\infty\epsilon D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon-\int_0^{\epsilon_F}\epsilon D(\epsilon)d\epsilon  -⓸$$

このとき、常温でも $k_BT\ll \epsilon_F$ が成り立ち、フェルミ準位近傍の電子しか励起されないため、電子気体の比熱は以下で表されます。(⑤の導出

$$C=\frac{dU}{dT}=\frac{\pi^2}{3}D(\epsilon_F)k_B^2T  -⑤$$$$=\frac{\pi^2}{2}Nk_B\frac{T}{T_F}$$

ここで、$T_F$ はフェルミ温度($=\epsilon_F/k_B$)と呼ばれています。

⑤の導出

③に $\epsilon_F$ を掛け、左辺の積分を分けると、

$$\Big(\int_0^{\epsilon_F}+\int_{\epsilon_F}^\infty\Big)\epsilon_FD(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon=\int_0^{\epsilon_F}\epsilon_FD(\epsilon)d\epsilon$$

この式を④の右辺に代入して整理すると、

$$\Delta U=\Big(\int_0^{\epsilon_F}+\int_{\epsilon_F}^\infty\Big)\epsilon D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon-\int_0^{\epsilon_F}\epsilon D(\epsilon)d\epsilon$$$$-\Big(\int_0^{\epsilon_F}+\int_{\epsilon_F}^\infty\Big)\epsilon_FD(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon+\int_0^{\epsilon_F}\epsilon_FD(\epsilon)d\epsilon$$$$=\int_{\epsilon_F}^\infty(\epsilon-\epsilon_F)D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon+\int_0^{\epsilon_F}(\epsilon_F-\epsilon)D(\epsilon)\Big(1-f(\epsilon)\Big)d\epsilon$$

従って比熱は、

$$C=\frac{dU}{dT}=\int_0^\infty(\epsilon-\epsilon_F)D(\epsilon)\frac{df}{dT}d\epsilon$$$$\cong D(\epsilon_F)\int_0^\infty(\epsilon-\epsilon_F)\frac{df}{dT}d\epsilon$$

最後は、$df/dT$ はフェルミ面の付近で大きな値を持つため、$D(\epsilon)\cong D(\epsilon_F)$ としています。フェルミ・ディラック分布より、

$$f(\epsilon)=\frac{1}{e^{(\epsilon-\mu)/k_BT}+1}$$

ここで、化学ポテンシャルを $\mu=\epsilon_F$ と置いて、$x\equiv(\epsilon-\epsilon_F)/k_BT$ で書き換え、積分を行うと⑤が得られます。

$$C=k_B^2TD(\epsilon_F)\int_{-\epsilon_F/k_BT}^\infty\frac{x^2e^x}{(e^x+1)^2}dx$$$$\cong k_B^2TD(\epsilon_F)\int_{-\infty}^\infty\frac{x^2e^x}{(e^x+1)^2}dx=\frac{\pi^2}{3}D(\epsilon_F)k_B^2T$$

尚、この積分については以下のゾンマーフェルト展開の公式を使いました。

$$\int_{-\infty}^\infty\frac{x^2e^x}{(e^x+1)^2}dx=\frac{\pi^2}{3}$$

 

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