修証義を読む

/禅宗

修証義とは

修證義とは、曹洞宗の開祖である道元の著作である「正法眼蔵」から、特に在家信徒への布教を念頭に、全5章31節にまとめたものです。「正法眼蔵」は出家僧を対象にして書かれていますが、修證義は在家で実践できる内容になっています。

修證義の「修」は修行、「証」は悟りであり、この2つの「義」(ことわり)をまとめた書物であることを表しています。

第一章 総序

【第1節】生(しょう)を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり、生死の中に仏あれば生死なし、 但生死即ち涅槃と心得て、生死として厭ふべきもなく、涅槃として欣ふべきもなし、 是時初めて生死を離るる分あり、唯一大事因縁と究尽すべし。

生とは何か、死とは何かを明らかにすることは、仏教徒として大事なことである。生死の中に悟り(仏)があれば、迷いはない。ただ、生死を悟りの境地(涅槃)と心得れば、生死を嫌うこともなく、悟りの境地を願うこともなくなる。この時、初めて生死の迷いから離れることができるので、唯一大事なこととして究めるべきだ。

【第2節】人身(にんしん)得ること難し、仏法値ふこと希なり、今我等宿善の助くるに依りて、 已に受け難き人身を受けたるのみに非らず遇ひ難き仏法に値ひ奉れり、生死の中の善生、最勝の生なるべし、最勝の善身を徒らにして露命を無常の風に任すること勿れ。

人間として生まれることは難しく、仏法に出会うことは稀である。今の我々は、これまでの功徳により有り難くも人間として生まれ、仏法にも出会うこともできた。これは輪廻の中では善い人生であり、最も勝れた人生である。その最も勝れた善い人生を、無駄に過ごしてはならない。

【第3節】無常憑(たの)み難し、知らず露命いかなる道の草にか落ちん、身已に私に非ず、 命は光陰に移されて暫くも停め難し、紅顔いずこへか去りにし、尋ねんとす るに蹤跡なし、熟(つらつら)観ずる所に往事の再び逢うべからざる多し、 無常忽ちに到るときは国王大臣親暱(じつ)従僕妻子珍宝たすくる無し、唯独り黄泉に趣くのみなり、己れに随い行くは只是れ善悪業等のみなり。

この世は無常で頼りにならない、短い人生はどのように終わるか分からない。自分の人生は自分の思い通りにはならず、光陰のごとく過ぎて行き、僅かでも留めておくおくことは難しい。若いときの自分はどこかに去り、面影を探しても跡形もない。過ぎ去った時間は再び訪れることはない。死(無常)に至るときは、国王も、大臣も、親族も、従者も、妻子も、財宝も助けてはくれない。ただ独り黄泉に行くのみである。その時に持って行けるものは、生前になした善悪の行いの結果のみである。

【第4節】今の世に因果を知らず業報(ごっぽう)を明らめず、三世を知らず、善悪を弁(わき)まえざる邪見の党侶(ともがら)には群すべからず、大凡因果の道理歴然として私なし、造悪の者は堕ち修善の者は陞る、豪釐(ごうり)も忒(たが)わざるなり、若し因果亡じて虚しからんが如きは、諸仏の出世あるべからず、祖師の西来あるべからず。

この世の因果の道理を知らず、この世の行いと報いを明らかにせず、過去・現在・未来の因果を知らず、善と悪とを区別することをしない人々と交わってはならない。因果の道理は公平である。悪をなした者は悪道に堕ち、善をなした者は善き道に昇ることは間違いのないことである。もし、この因果の道理が間違っていれば、仏がこの世に現れることはなく、達磨がインドから中国に来ることもなかっただろう。

【第5節】善悪の報に三時あり、一者(ひとつには)順現報受、ニ者順次生受、三者順後次受、これを三時という、仏祖の道を修習するには、其最初より斯三時の業報の理を効(なら)い験(あき)らむるなり、爾(なんじ)あらざれば多く錯りて邪見に堕つるなり、但邪見に堕つるのみに非ず、 悪道に堕ちて長時の苦を受く。

善悪の行いと報いの関係には3種類ある。第1は今の人生の行いの結果が今の人生に現れること、第2は今の人生の行いの結果が次の人生で現れること、第3は今の人生の行いの結果が更に後の人生で現れることである。仏の道理を修め習うときは、最初にこの3種類の因果を学ぶのである。そうでなければ、多くの者は間違った見解に陥るのみでなく、悪道に陥り長く苦しむことになる。

【第6節】当に知るべし今生の我身二つ無し、三つ無し、徒らに邪見に堕ちて虚しく悪業を感得せん、惜しからざらめや、悪を造りながら悪に非ずと思い、悪の報あるべからずと邪思惟するに依りて悪の報を感得せざるには非ず。

今の人生は2つも3つもないことを知るべきだ。誤った見解に堕ちて、空しく人生を過ごしては、惜しんでも惜しみきれない。悪をなしても悪ではないと思い、その報いはないと考えても、悪い報いがなくなるわけではない。

 

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