酸化還元反応
酸化還元反応とは、酸化と還元を伴う反応で、ある原子の酸化数が増加すればその原子は酸化、ある原子の酸化数が減少すればその原子は還元されたといいます。酸化還元反応に関する用語の定義は以下になります。
| 酸 | $\mathrm{H^+}$ を他に与える物質 | 
| 塩基 | $\mathrm{H^+}$ を他から受取る物質(水に溶けて $\mathrm{OH^-}$ を生じる物質) | 
| 酸の価数 | 酸1分子が放出することのできる水素イオン $\mathrm{H^+}$ の数 | 
| 塩基の価数 | 塩基1分子が受け取ることのできる水素イオン $\mathrm{H^+}$ の数 | 
| 酸化 | 狭義:酸素と結合する変化(例:$\mathrm{C\to CO_2}$)、または、 水素を失う変化(例:$\mathrm{H_2S\to S}$) 広義:電子を失う変化(例:$\mathrm{Zn\to Zn^{2+}+2e^-}$) | 
| 還元 | 狭義:酸素を失う変化(例:$\mathrm{CuO\to Cu}$)、または、 水素と結合する変化(例:$\mathrm{Cl_2\to HCl}$) 広義:電子を得る変化(例:$\mathrm{2H^++2e^-\to H_2}$) | 
| 酸化数 | イオン(イオン化合物)の電荷に等しく、イオン中の原子の酸化数は 酸素 $\mathrm{O=-2}$ 、水素 $\mathrm{H=+1}$ として決められる | 
イオン化係数
イオン化係数とは、金属が水溶液中で陽イオンになろうとする性質です。下記の表では、イオン化傾向は左ほど大きく、右ほど小さくなります。
| 反応物 | K | Ca | Na | Mg | Al | Zn | Fe | Ni | Sn | Pb | H2 | Cu | Hg | Ag | Pt | Au | 
| 空気 | 内部まで酸化 | 表面に酸化被膜 | 酸化されない | |||||||||||||
| 水 | 常温で反応 | 高温水蒸気と反応 | 反応しない | |||||||||||||
| 酸 | 塩酸や希硫酸と反応し水素を発生 | 硫酸と反応 | 王水と反応 | |||||||||||||
※王水(おうすい、aqua regia)とは、濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比で混合した橙赤色の液体で、非常に強い酸化力を持ち、通常の酸では溶かせない金や白金などの貴金属を溶かすことができます。
酸化剤と還元剤
酸化剤とは、他の物質を酸化し、自身は還元される物質で、還元剤とは、他の物質を還元し、自身は酸化される物質です。代表的な酸化剤は以下になります。
| オゾン | $\mathrm{O_3+2H^++2e^-\to O_2+H_2O}$ | 
| 過酸化水素 | $\mathrm{H_2O_2+2H^++2e^-\to2H_2O}$ | 
| 過マンガン酸カリウム | $\mathrm{MnO_4^-+8H^++5e^-\to Mn^{2+}+4H_2O}$ | 
代表的な酸化剤は以下になります。
| ナトリウム | $\mathrm{Na\to Na^++e^-}$ | 
| 過酸化水素 | $\mathrm{H_2O_2\to O_2+2H^++2e^-}$ | 
| 硫黄水素 | $\mathrm{H_2S\to S+2H^++2e^-}$ | 
電池
電池とは、イオン化傾向の異なる2種類の金属を電解質水溶液に浸すと、イオン化傾向の大きい金属が負極、イオン化傾向の小さい金属が正極となります。負極の酸化で生じた電子が導線を伝わって正極に流れるため、正極から負極に電流が流れます。
主な電池は以下になります。
- ボルタ電池
 正極(還元) 溶液 負極(酸化) $\mathrm{Cu}$ $\mathrm{H_2SO_4}$ $\mathrm{Zn}$ $\mathrm{2H^++2e^-\to H_2}$ $\mathrm{Zn\to Zn^{2+}+2e^-}$ 
- ダニエル電池
 正極(還元) 溶液 負極(酸化) $\mathrm{Cu}$ $\mathrm{ZnSO_4 |CuSO_4}$ $\mathrm{Zn}$ $\mathrm{Cu^{2+}+2e^-\to Cu}$ $\mathrm{Zn\to Zn^{2+}+2e^-}$ 
- 鉛蓄電池
 正極(還元) 溶液 負極(酸化) $\mathrm{PbO_2}$ $\mathrm{H_2SO_4}$ $\mathrm{Pb}$ $\mathrm{PbO_2+4H^++2e^-+SO_4^{2-}}$ 
 $\to\mathrm{PbSO_4+2H_2O}$$\mathrm{Pb+SO_4^{2-}\to PbSO_4+2e^-}$ 
電気分解
電気分解とは、電解質水溶液に外部から直流電圧をかけると、各電極で酸化還元反応が起こる現象です。塩化ナトリウム溶液 $\mathrm{NaCl}$ の場合、各電極で以下のような反応が起こります。
| 陽極(外部電圧の正極) | 陰極(外部電圧の負極) | 
| 酸化反応(電子を放出する反応) | 還元反応(電子を受け取る反応) | 
| $\mathrm{2Cl^-\to Cl_2\uparrow+2e^-}$ | $\mathrm{2Na^++2e^-\to 2Na}$ | 
正電荷を持つナトリウムイオン $\mathrm{Na^+}$ は陰極へ移動し、還元されて金属ナトリウム $\mathrm{Na}$ として析出し、負電荷を持つ塩化物イオン $\mathrm{Cl^-}$ は陽極へ移動し、酸化されて塩素ガス $\mathrm{Cl_2}$ として発生します。
ファラデーの電気分解の法則とは、陰極で消費される電気量と陽極で発生する電気量は等しいとするものです。
中和反応
中和反応とは、酸と塩基が互いに相手を酸化あるいは還元させ、全体として中性の状態になる反応です。中和反応の条件は、2つの溶液の価数を $a$ 、 $a’$ 、モル濃度を $c$ 、 $c’$ 、体積を $V$ 、 $V’$ とすると以下で表されます。
酸から生じるの $\mathrm{H^+}$ 物質量 = 塩基から生じる $\mathrm{OH^-}$ の物質量
$$ac\times\frac{V}{1000}=ac’\times\frac{V’}{1000}$$


 
  
  
  
  
