概要
天台宗は、妙法蓮華経(法華経)を根本仏典とする宗派で、6世紀の中国で成立しました。日本へは9世紀に伝わり、南都六宗、日本十三宗の1つとなっています。
- 時代:6世紀~
- 宗祖:慧文(えもん)
- 所依:法華経
第二祖の慧思(えし)の弟子が第三祖の智顗(ちぎ)で、智顗は隋の皇帝の帰依を受け、天台山国清寺を建立し天台宗を確立しました。そのため、智顗が実質的な開祖とされています。
教義
天台宗の大義は教観(きょうかん)の二門です。
- 教門:智慧の理解により仏になる道を開く
⇒四教(しきょう)、五味、一乗、十如是(じゅうにょぜ) - 観門:実際の修行により覚りを開く
⇒十二因縁、二諦、四種三昧、三惑義(さんわくぎ)
仏陀の一代の教えを分類すると、教に四教があり、時には五時があります。四教には次の二種があり、合せて八教と呼んでいます。
- 仮法の四教:約教の判、教理の大小浅深を明らかにする
- 化儀の四教:約時の判、説教に用いた儀式を年代別に明らかにする
仮法の四教
仮法の四教とは、三蔵教、通教、別教、円教の4つです。
- 三蔵教:全ての小乗教
- 通教:大乗と小乗に共通した教え
- 別教:大乗のみの教え
- 円教:大乗の中で最高円満な教え
化儀の四教
化儀の四教とは、頓教(とんきょう)、漸教(ぜんきょう)、不定教(ふじょうきょう)、秘密教の4つです。仏陀一代の教説を4種に整理したものです。
- 頓教:仏が成道後すぐに真理をそのまま説いた教え
- 漸教:相手の機根によって段階的に説いた教え
- 不定教:同じ場所の衆生に説いた同じ教え(機根の違いから理解が異なる)
- 秘密教:異なる場所で個別に説いた異なる教え(互いの存在を知らない)
五時
五時とは、華厳時、阿含時、方等時、般若時、法華涅槃時の5つです。この五時によって、仏陀一代の説教が全て網羅できると考えています。
- 華厳時:悟りを開いた直後の21日間に説いた教え
⇒華厳経 - 阿含時:次の12年間に小乗の機根をもつ者に説いた教え
⇒長阿含、中阿含、雑一阿含、雑阿含 - 方等時:次の8年間に小乗を批判し、大乗に引き入れるために説いた教え
⇒維摩経、思益経、勝鬘経 - 般若時:次の22年間に大乗と小乗の執着を捨てるために説いた教え
⇒大品般若経、小品般若経、金剛般若教 - 法華涅槃時:最後の8年間に説いた教え
⇒法華経、涅槃経
日本の天台宗
最澄は9世紀の初めに、唐に渡って天台山に登り、天台教学を受けました。日本に帰国した後は、比叡山延暦寺を拠点に天台教学を広め、これが日本における天台宗の始まりとなりました。後年、円仁、円珍などの多くの僧侶を輩出しました。
最澄は全ての衆生は成仏できるという法華一乗の立場を説き、奈良仏教と論争が起こりました。特に法相宗との間で行われた論争は三一権実諍論(さんいちごんじつ の そうろん)と呼ばれています。
- 四宗兼学
智顗を受け継ぎ法華経を中心としつつも、禅や戒、念仏、密教の要素も取り入れています。 - 天台密教
真言宗の密教を東密と呼ぶのに対し、日本の天台宗の密教は台密と呼ばれています。真言密教が大日如来を本尊とするのに対し、天台密教は法華一乗の立場を取り、久遠実成の釈迦如来を本尊としています。 - 止観行
修行は法華経に基づく止観を行います。止観とは瞑想法の1つで、[止」とは心を乱さず集中すること、「観」とは事物を正しく観(み)ることです。

宗教・思想
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