フォノンとは、結晶内の格子振動による弾性波を量子化したものです。
弾性波
古典的な弾性波を導きます。簡単のため、間隔 $a$ で並ぶ1次元の $N$ 個の原子配列(格子)を考えます。ある原子($s$)に働く力は両隣りの原子との距離に比例した力が働くと仮定します。このとき、原子に働く力は、
$$F_s=C(q_{s+1}-q_s)+C(q_{s-1}-q_s)$$
で表されるため、運動方程式は以下になります。尚、$q_s$ と $m$ は原子 $s$ の変位と質量、$C$ は比例定数(弾性定数)を表します。
$$m\frac{d^2q_s}{dt^2}=C(q_{s+1}+q_{s-1}-2q_s)$$
ここで、全ての原子の時間変化を $q_s\sim e^{-i\omega t}$ と仮定すると運動方程式は、
$$-\omega^2mq_s=C(q_{s+1}+q_{s-1}-2q_s)$$
この差分方程式は次の進行波の解をもつため、
$$q_{s\pm1}=qe^{i(s\pm1)ka}$$
運動方程式より、以下の分散関係が導かれます。
$$\omega^2=\frac{4C}{m}\sin^2{\Big(\frac{1}{2}ka\Big)}$$
この場合、群速度は以下で表されます。
$$v_g\equiv\frac{d\omega}{dk}=\sqrt{\frac{Ca^2}{m}}\cos{\Big(\frac{1}{2}ka\Big)}$$
尚、$k$ は波数で以下で定義されます。
$$k=\frac{2\pi n}{Na} , n=0,\pm1,\pm2,\cdots,\pm\frac{N}{2}$$
$n$ は波の数で、$n$ が大きくなるほど波長は短くなります。原子は間隔 $a$ で並んでいるため、意味のある最も短い波長は $2a$($k=2\pi/\lambda=\pi/a$)となります。
量子化モデル
運動量{$p_s$}を使うと、系のハミルトニアンは以下で表されます。
$$H=\sum_{s=1}^N\Big(\frac{1}{2m}p_s^2+\frac{C}{2}(q_{s+1}-q_s)^2\Big) -①$$
以下、座標と運動量をそれぞれ離散フーリエ変換した基準座標{$Q_s$}と共役運動量{$P_k$}を以下で定義します。
$$Q_k=\frac{1}{\sqrt{N}}\sum_sq_se^{-iksa} , P_k=\frac{1}{\sqrt{N}}\sum_sp_se^{iksa} -②$$
この逆変換は以下になります。
$$q_s=\frac{1}{\sqrt{N}}\sum_kQ_ke^{iksa} , p_s=\frac{1}{\sqrt{N}}\sum_kP_ke^{-iksa} -③$$
②については、$[q_s,p_{s’}]=i\hbar\delta(s,s’)$ を利用すると、次の交換関係式が成り立ちます。
$$[Q_k,P_{k’}]=i\hbar\delta(k,k’)$$
また、③を①に代入すると、ハミルトニアンは以下で表されます。
$$H=\sum_k\Big(\frac{1}{2m}P_kP_{k-1}+\frac{M}{2}\omega_k^2Q_kQ_{k-1}\Big)$$
$$\omega_k\equiv\sqrt{\frac{2C(1-\cos{ka})}{m}}$$
基準座標は次の調和振動子の運動方程式に従うため、
$$\ddot{Q}_k+\omega_k^2Q_k=0$$
フォノンのエネルギー固有値は以下で表すことができます。
$$\epsilon_k=\Big(n_k+\frac{1}{2}\Big)\hbar\omega_k$$

