ラメの弾性定数
ラメの弾性定数(Lamé constants)とは、等方等質な弾性体の変形を記述する際に用いられる2つのパラメータ、ラメの第1定数 $\lambda$ と ラメの第2定数 $\mu$ の総称です。
弾性体の歪みエネルギーは以下で表されますが、
$$U=\frac{1}{2}C_{ijkl}q_{ij}q_{kl}$$
歪みエネルギーはスカラーであるため、この各項もスカラーになります。2階の対称テンソル $q_{ij}$ から作られる2次のスカラー量は $q_{ll}^2$ と $q_{ij}q_{ij}$ のみであるため、以下のように書き替えることができます。ここで、$\lambda$ と $\mu$ はラメの弾性定数と呼ばれています。
$$U\equiv\frac{1}{2}\lambda q_{ll}^2+\mu q_{ij}q_{ij} -①$$
-
- \(q_{ij}\):歪みテンソル
- \(\lambda\):第1ラメ定数
- \(\mu\):第2ラメ定数(剛性率、せん断弾性率)
- \(U\):単位体積当たりのひずみエネルギー
フックの法則はラメの弾性定数により以下で表されます(ラメの構成式)。
$$\sigma_{ij}\equiv\frac{\partial U}{\partial q_{ij}}=\lambda q_{ll}\delta_{ij}+2\mu q_{ij} -②$$
ヤング率とポアソン比
ヤング率とポアソン比は以下のように定義されます。
- ヤング率:$Y$
一方向に応力を加えたとき、応力とその方向の歪み(伸縮)の関係を表します。一方向の応力を $\sigma_{11}$、その方向の歪みを $q_{11}$ とすると、
$\sigma_{11}=Yq_{11} -③$
$\sigma_{22}=\sigma_{33}=0 -④$
- ポアソン比:$\nu$
一方向に応力を加えたとき、応力とその垂直方向の歪み(伸縮)の関係を表します。応力方向の歪みを $q_{11}$、その垂直方向の歪みを $q_{22}$(または $q_{33}$)とすると、
$q_{22}=q_{33}=-\nu q_{11} -⑤$
ラメの弾性定数は、ヤング率 $Y$ とポアソン比 $\nu$ により以下のように表すことができます。
$$\lambda=\frac{Y\nu}{(1+\nu)(1-2\nu)} -⑥$$$$\mu=\frac{Y}{2(1+\nu)} -⑦$$
また、ヤング率とポアソン比は、ラメの弾性定数により以下のように表すことができます。
$$Y=\frac{\mu(3\lambda+2\mu)}{\lambda+\mu} -⑧$$$$\nu=\frac{\lambda}{2(\lambda+\mu)} -⑨$$
通常の安定な弾性体の条件は以下になります。
$$Y>0,\qquad -1<\nu<\frac12$$
⑥⑦の導出
②の $i=j=1$ について、⑤を代入し、③を使うと、
$$\sigma_{11}=\lambda(q_{11}+q_{22}+q_{33})+2\mu q_{11}=\big(\lambda(1-2\nu)+2\mu\big)q_{11}$$$$Y=\lambda(1-2\nu)+2\mu -(1)$$
②の $i=j=2$ について、⑤を代入し、④を使うと、
$$\sigma_{22}=\lambda(q_{11}+q_{22}+q_{33})+2\mu q_{22}=\big(\lambda(1-2\nu)-2\mu\nu\big)q_{11}$$$$2\mu\nu=\lambda(1-2\nu) -(2)$$
(1) と (2) から $\mu$ を消去すると⑥が得られます。
$$\lambda=\frac{Y\nu}{(1+\nu)(1-2\nu)} \to⑥$$
一方、(1) と (2) から $\lambda$ を消去すると⑦が得られます。
$$\mu=\frac{Y}{2(1+\nu)} \to⑦$$
剛性率
剛性率とは、せん断応力に対するせん断歪み(ずれ変形)の弾性率(変形のしにくさ)を表します。剛性率 $\mu$ は、②で $i\ne j$ と置くと、以下のように表されます。
$$\sigma_{ij}=2\mu q_{ij} (i\ne j) -⑩$$
また、ひずみテンソルのせん断成分 \(q_{ij}\) と、工学せん断ひずみ \(\gamma_{ij}\) の間には以下の関係があります。
$$\gamma_{ij}=2q_{ij} (i\ne j) -⑪$$
体積弾性率
体積弾性率 $K$ とは、静水圧 $p$ の関係式である
$$\sigma_{ij}=-p\delta_{ij} -⑫$$
と体積歪み $q_{ll}$ の関係を表します。尚、最後の式は②と③を使っています。
$$p=-Kq_{ll}$$$$K=\lambda+\frac{2}{3}\mu -⑬$$
体積弾性率は、ヤング率とポアソン比で表すと以下になります。
$$K=\frac{Y}{3(1-2\nu)} -⑭$$
①の弾性体の歪みエネルギーは、体積弾性率により以下で表されます。最後の式は $\delta_{ij}^2=3$ を使っています。
$$U=\frac{1}{2}Kq_{ll}^2+\mu\Big(q_{ij}q_{ij}-\frac{1}{3}q_{ll}^2\Big)$$$$=\frac{1}{2}Kq_{ll}^2+\mu\Big(q_{ij}-\frac{1}{3}q_{ll}\delta_{ij}\Big)^2$$
この第1項は体積歪み、第2項は等積歪みを表します。それぞれの場合で歪みエネルギーが正 $U\ge0$ になるためには、係数の $K$ と $\mu$ が正である必要があります。
$$K\ge0 , \mu\ge0$$
⑬を導く
②で $i=j$ と置くと、$\delta_{ll}=3$ より、$\sigma_{ll}=(3\lambda+2\mu)q_{ll}$ となるため、これを②に代入して $q_{ll}$ を消去すると、以下のように書き替えられます。
$$q_{ij}=\frac{1}{2\mu}\sigma_{ij}-\frac{\lambda}{2\mu(3\lambda+2\mu)}\sigma_{ll}\delta_{ij}$$
これに⑫を代入すると、
$$q_{ij}=-\frac{p}{3\lambda+2\mu}\delta_{ij}$$
ここで $i=j$ と置くと、$\delta_{ll}=3$ より、⑬が得られます。
$$q_{ll}=-\frac{3p}{3\lambda+2\mu}$$



