波動関数とは

/量子力学

波動関数とは

波動関数とは、一般に波動現象を表す関数ですが、本記事では、シュレディンガーの波動方程式に従う関数に限定していくつかの特徴を説明します。

固有関数である

古典的な弦の振動を考えます。両端を固定された長さ $L$ の弦が振動する場合、その波長 $\lambda$ は長い順に、$2L$、$L$、$2L/3$、$L/2$・・・となります。これをまとめると以下になります。

$$\lambda_n=\frac{2L}{n}   n=1,2,3・・・$$

$c$ を弦の速度とすると、角振動数 $\omega$ は以下で表されます。

$$\omega_n=k_nc=\frac{\pi cn}{L}$$

以上は、境界条件が定められている弦の振動は離散的な角振動数を持つことの説明です。

量子論の場合は、離散的な角振動数に対応するエネルギー準位 $\epsilon_n$ も離散値をとります。

$$\epsilon_n=\hbar\omega_n$$

そして、それらのエネルギー準位に対応する波動関数 $\phi_n$ は、時間に依存しないシュレディンガー方程式を満足します。

$$H\phi_n({\bf r})=\epsilon_n\phi_n({\bf r})  -①$$

一般に、演算子をある関数に作用させると元の関数の定数倍になる場合、その関数を演算子の固有関数、その定数を固有値と言います。そして、その方程式を固有方程式と呼びます。

重ね合わせることができる

一般的な波は、単振動の重ね合わせで表すことができます。波動関数の場合も同様で、固有関数 $\phi_n$ を重ね合わせた関数 $\phi$ もシュレディンガー方程式を満足します。

$$\phi({\bf r})=\sum_nc_n\phi_n({\bf r})$$

このとき各固有関数は互いに直交するように選ぶことができます。ここで「直交」とは、異なる固有関数同士の内積が0になることです。

$$(\phi_n,\phi_m)=\int\phi_n^*({\bf r})\phi_m({\bf r})d{\bf r}=\delta_{nm}$$

尚、同じ固有関数同士の内積を1としているため、この式は固有関数の規格化条件を含んだものとなります。

確率関数である

ある粒子の波動関数 $\phi({\bf r})$ が与えられたとき、粒子の位置に関する確率は $|\phi({\bf r})|^2d{\bf r}$ で与えられます。例えば、粒子の $X$ 座標の期待値 $\overline{x}$ は以下で求めることができます。

$$\overline{x}=\int x|\phi({\bf r})|^2d{\bf r}=\int\phi^*x\phi d{\bf r}  -②$$

期待値を求められる

他の物理量についても、②と同様に求めることができます。例えば、粒子の運動量の期待値は以下になります。

$$\overline{{\bf p}}=\int\phi^*({\bf r})(-i\hbar\nabla)\phi({\bf r})d{\bf r}$$

一般的な物理量 $A({\bf r},{\bf p})$ についても、これを観測したときに得られる期待値は以下になります。ここで $\hat{A}$ は物理量 $A$ の演算子に相当します。

$$\overline{A}=\int\phi^*({\bf r})\hat{A}({\bf r},-i\hbar\nabla)\phi({\bf r})d{\bf r}  -③$$

固有値の観測確率が求められる

一般の物理量 $A$ の場合も、①と同様に考えることができます。ここで $a_n$ は固有値で、状態 $\chi_n$ の粒子について物理量 $A$ を観測すると、確定値 $a_n$ が得られることを意味します。

$$\hat{A}\chi_n({\bf r})=a_n\chi_n({\bf r})$$

一般には、この固有関数がシュレディンガー方程式①の解になっているとは限りませんが、ここでは以下のように、波動関数 $\phi$ が固有関数 $\chi$ により展開できて、かつ規格化条件を満たすものと仮定します。

$$\phi({\bf r})=\sum_nc_n\chi_n({\bf r})  -④$$

$$(\chi_m,\chi_n)=\int\chi_m^*({\bf r})\chi_n({\bf r})d{\bf r}=\delta_{mn}$$

④を③に代入して、規格化条件を使うと以下になります。

$$\overline{A}=\sum_{m,n}c_m^*c_n\int\chi_m^*({\bf r})\hat{A}\chi_n({\bf r})d{\bf r}=\sum_n|c_n|^2a_n$$

このことは、波動関数 $\phi$ で表される粒子について物理量 $A$ を観測したとき、値 $a_n$ が得られる確率は $|c_n|^2$ で与えられることを示しています。そして $c_n$ は波動関数 $\phi$ と固有関数 $\chi$ の内積で求められます。

$$(\chi_n,\phi)=\int\chi_n^*({\bf r})\phi({\bf r})d{\bf r}=c_n$$

 

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