固有値問題とは
固有値問題とは、あるベクトルの線形変換が、元のベクトルのスカラー倍になるための条件を求める問題です。このスカラー倍の値を固有値と呼びます。
線型変換を $n\times n$ の正方行列($A$)とすると、固有値($\lambda$)とそれに対応する固有ベクトル(${\bf x}$)の関係は以下で表されます。
$$A{\bf x}=\lambda{\bf x}$$
これは単位行列($I$)を使ってを書き換えると、
$$(A-\lambda I){\bf x}=0$$
この方程式が自明でない解をもつためには、以下の固有方程式が0である必要があります。
$$\Phi_A(\lambda)\equiv|A-\lambda I|=0$$
これは $n$ 次の代数方程式なので、重複を含めると $n$ 個の根が存在することになります。
$$\Phi_A(\lambda)=(\lambda-\lambda_1)(\lambda-\lambda_2)\cdots(\lambda-\lambda_n)=0$$
固有値
固有値について以下のことが成り立ちます。
- 行列 $A$ の行列式は、固有値の積で表される。
$$|A|=\lambda_1\lambda_2\cdots\lambda_n$$ - 行列 $A$ の対角和は、固有値の和で表される。
$$\mathrm{tr}A=\lambda_1+\lambda_2+\cdots+\lambda_n$$ - 逆行列 $A^{-1}$ が存在することと、行列式が0でない($|A|\ne0$)ことと、全ての固有値が0でない($\lambda_i\ne0$)ことは同値となる。
- 行列 $A$ が対象行列の場合、全ての固有値は実数になる。
固有ベクトル
固有ベクトルについて以下のことが成り立ちます。
- 異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する。それらの固有ベクトルは、固有空間を作りる。
- 行列 $A$ が対象行列の場合、全ての固有ベクトルは実数ベクトルとなる。
- 各固有値に対応する大きさ1の固有ベクトルを ${\bf u}_i,$ とすると、このベクトルを並べた行列 $U=({\bf u}_1\cdots{\bf u}_n)$ は直交行列となる。
$$UU^t=U^tU=I$$ - この直交行列 $U$ を用いて、行列 $A$ を対角化することができる。ここで、固有値 $\lambda_i$ を対角上に並べた行列を $\Lambda$ とする。
$$U^tAU=\Lambda -①$$
行列の対角化
①について証明します。$n$ 個の固有値とそれに属する固有ベクトルについて、
$$A{\bf u}_1=\lambda_1{\bf u}_1,\cdots,A{\bf u}_n=\lambda_n{\bf u}_n$$
であるため、まとめて書くと、
$$A({\bf u}_1\cdots{\bf u}_n)=({\bf u}_1\cdots{\bf u}_n)
\begin{pmatrix}
\lambda_1 & & 0 \\
& \ddots & \\
0 & & \lambda_n
\end{pmatrix}=U\Lambda$$
この両辺の左から $U^{-1}$ を掛けると以下が得られます。
$$U^{-1}AU=\Lambda$$

