量子力学における摂動論

/量子力学

摂動論とは

摂動論とは、天体力学において、天体の軌道運動の摂動を論じるための近似解法です。例えば、惑星の運動を計算する場合、主要な太陽の引力に対し、他の惑星からの影響を補正項(摂動)として扱います。

量子力学の場合は、ハミルトニアン $H$ が主要な部分 $H_0$ と摂動部 $\lambda H_1$ に分けて考えます。$\lambda$ は摂動の大きさを表すパラメタです。

$$H=H_0+\lambda H_1  -①$$

このときシュレディンガー方程式を、

$$H\phi_n=\epsilon_n\phi_n  -②$$

波動関数 $\phi$ と固有値 $\epsilon$ を $\lambda$ のベキ級数で展開できると考えると、

$$\phi_n=\phi_n^{(0)}+\lambda\phi_n^{(1)}+\lambda^2\phi_n^{(2)}+\cdots  -③$$$$\epsilon_n=\epsilon_n^{(0)}+\lambda\epsilon_n^{(1)}+\lambda^2\epsilon_n^{(2)}+\cdots  -④$$

$\epsilon$ の次数によって、シュレディンガー方程式を分けて考えることができます。尚、0次については、以下の摂動が無い場合のシュレディンガー方程式が成り立とします。

$$H_0\phi_n^{(0)}=\epsilon_n^{(0)}\phi_n^{(0)}  -⑤$$

1次の摂動項

シュレディンガー方程式の1次の摂動項は、①③④を②に代入し、$\lambda$ の1次の項を0と置くと以下になります。

$$H_1\phi_n^{(0)}+H_0\phi_n^{(1)}=\epsilon_n^{(1)}\phi_n^{(0)}+\epsilon_n^{(0)}\phi_n^{(1)}  -⑥$$

このとき、$\phi_n^{(1)}$ は $\phi_n^{(0)}$ の線形和で表されると仮定すると、

$$\phi_n^{(1)}=\sum_jc_j\phi_j^{(0)}  -⑦$$

1次の摂動エネルギーは、

$$\epsilon_n^{(1)}=\braket{n|H_1|n}  -⑧$$

波動関数の係数 $c_j$ は以下で表されます。

$$c_{j(\ne n)}=-\frac{\braket{j|H_1|n}}{\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)}}  -⑨$$$$c_n=0$$

⑧を導く

⑦を⑥に代入すると、

$$H_1\phi_n^{(0)}+H_0\sum_ic_i\phi_i^{(0)}=\epsilon_n^{(1)}\phi_n^{(0)}+\epsilon_n^{(0)}\sum_ic_i\phi_i^{(0)}$$

左辺第2項に⑤を適用すると、

$$H_1\phi_n^{(0)}+\sum_ic_i(\epsilon_i^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})\phi_i^{(0)}=\epsilon_n^{(1)}\phi_n^{(0)}  -(1)$$

左から $\phi_n^{(0)*}$ を掛けて積分すると、左辺第2項は $i=n$ となり0となるため、以下が導かれます。

$$\braket{\phi_n^{(0)}|H_1|\phi_n^{(0)}}=\epsilon_n^{(1)}$$

⑨を導く

(1)の右から $\phi_j^{(0)*}$($j\ne n$)を掛けて積分すると、

$$\braket{\phi_j^{(0)}|H_1|\phi_n^{(0)}}+c_j(\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})=0$$

これにより⑨が得られます。

2次の摂動項

シュレディンガー方程式の2次の摂動項は、①③④を②に代入し、$\lambda$ の2次の項を0と置くと以下になります。

$$H_1\phi_n^{(1)}+H_0\phi_n^{(2)}=\epsilon_n^{(2)}\phi_n^{(0)}+\epsilon_n^{(1)}\phi_n^{(1)}+\epsilon_n^{(0)}\phi_n^{(2)}  -⑩$$

このとき、$\phi_n^{(2)}$ は $\phi_n^{(0)}$ の線形和で表されると仮定すると、

$$\phi_n^{(2)}=\sum_id_i\phi_i^{(0)}  -⑪$$

2次の摂動エネルギーは、

$$\epsilon_n^{(2)}=-\sum_j\frac{\braket{n|H_1|j}\braket{j|H_1|n}}{\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)}}  -⑫$$

波動関数の係数 $d_j$ は以下で表されます。

$$d_{j(\ne n)}=\sum_i\frac{\braket{j|H_1|i}\braket{i|H_1|n}}{(\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})(\epsilon_i^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})}-\frac{\braket{j|H_1|n}\braket{n|H_1|n}}{(\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})^2}  -⑬$$$$d_n=-\frac{1}{2}\sum_i\frac{\braket{n|H_1|i}\braket{i|H_1|n}}{(\epsilon_i^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})^2}  -⑭$$

⑫を導く

⑦⑪を⑩に代入すると、

$$H_1\sum_ic_i\phi_i^{(0)}+H_0\sum_id_i\phi_i^{(0)}=\epsilon_n^{(2)}\phi_n^{(0)}+\epsilon_n^{(1)}\sum_ic_i\phi_i^{(0)}+\epsilon_n^{(0)}\sum_id_i\phi_i^{(0)}$$

⑤を代入すると、

$$H_1\sum_ic_i\phi_i^{(0)}+\sum_id_i(\epsilon_i^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})\phi_i^{(0)}=\epsilon_n^{(2)}\phi_n^{(0)}+\epsilon_n^{(1)}\sum_ic_i\phi_i^{(0)}  -(2)$$

左から $\phi_n^{(0)*}$ を掛けて積分すると、左辺第2項は $i=n$ で0となり、右辺第2項は $c_n=0$ であるため、以下が導かれます。

$$\sum_ic_i\braket{\phi_n^{(0)}|H_1|\phi_i^{(0)}}=\epsilon_n^{(2)}$$

これに⑨を代入すると⑫が得られます。

⑬を導く

(2)の右から $\phi_j^{(0)*}$($j\ne n$)を掛けて積分し、⑧を代入すると、

$$\sum_ic_i\braket{\phi_j^{(0)}|H_1|\phi_i^{(0)}}+d_j(\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})=\epsilon_n^{(1)}c_j$$$$d_j=-\sum_i\frac{c_i\braket{j|H_1|i}}{\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)}}+\frac{c_j\braket{n|H_1|n}}{\epsilon_j^{(0)}-\epsilon_n^{(0)}}$$

これに⑨を代入すると⑬が得られます。

⑭を導く

③の規格化条件より内積が1になるため、以下の右辺第2項や第3項の括弧の中は0となります。

$$1=\braket{\phi_n|\phi_n}=\braket{\phi_n^{(0)}|\phi_n^{(0)}}+\lambda\Big(\braket{\phi_n^{(0)}|\phi_n^{(1)}}+\braket{\phi_n^{(1)}|\phi_n^{(0)}}\Big)$$$$+\lambda^2\Big(\braket{\phi_n^{(0)}|\phi_n^{(2)}}+\braket{\phi_n^{(1)}|\phi_n^{(1)}}+\braket{\phi_n^{(2)}|\phi_n^{(0)}}\Big)+\cdots$$

右辺第3項については、

$$\braket{\phi_n^{(0)}|\phi_n^{(2)}}+\braket{\phi_n^{(2)}|\phi_n^{(0)}}=-\braket{\phi_n^{(1)}|\phi_n^{(1)}}  -(3)$$

ここで、

$$\braket{\phi_n^{(0)}|\phi_n^{(2)}}=\braket{\phi_n^{(2)}|\phi_n^{(0)}}=\braket{\sum_id_i\phi_i^{(0)}|\phi_n^{(0)}}=d_n$$

$$\braket{\phi_n^{(1)}|\phi_n^{(1)}}=\braket{\sum_ic_i\phi_i^{(0)}|\sum_jc_j\phi_j^{(0)}}=\sum_i|c_i^*c_i|$$$$=\sum_i\frac{\braket{n|H_1|i}\braket{i|H_1|n}}{(\epsilon_i^{(0)}-\epsilon_n^{(0)})^2}$$

これらを(3)に代入すると、⑭が得られます。

 

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