ブラック・ショールズ方程式とは
ブラック–ショールズ方程式(Black–Scholes Equation)とは、デリバティブの価格づけに現れる偏微分方程式です。
時刻 $t$ での原資産(株式)の価格が $S$ であるときの派生証券の価格を $f$ とすると、この価格 $f(S,t)$ は以下の偏微分方程式を満たします。
$$\frac{\partial f}{\partial t}+rS\frac{\partial f}{\partial S}+\frac{1}{2}\sigma^2S^2\frac{\partial^2f}{\partial S^2}=rf -①$$
尚、 原資産(株式)の価格 $S$ が、ウィーナー過程 $x$ と以下の関係にあることを前提とします。$\sigma$ はボラリティ(変動率)、$\mu$ はドリフト(平均増加率)を表し、いずれも定数とします。
$$dS=\mu Sdt+\sigma Sdx -②$$
また、無リスク資産(債券)の価格 $B$ が、利率 $r$ と以下の関係にあること前提とします。
$$dB=rBdt -③$$$$B(t)=B_0e^{rt}$$
単純な例として、株式($f=S$)や債券($f=e^{rt}$)は、ブラック–ショールズ方程式を満たすことが分かります。もし、派生証券がブラック–ショールズ方程式を満たさなければ、裁定機会が生じてしまうため、派生証券の価格は是正される方向に向かいます。
ブラック・ショールズ方程式の導出
ブラック–ショールズ方程式を以下の伊藤の公式から導きます。
$$df(z,t)=\Big(\frac{\partial f}{\partial t}+a\frac{\partial f}{\partial z}+\frac{b^2}{2}\frac{\partial^2f}{\partial z^2}\Big)dt+b\frac{\partial f}{\partial z}dx$$$$dz(t)=a(z,t)dt+b(z,t)dx$$
ここで $z\to S$(株式)として、②を使うと、
$$df=\Big(\frac{\partial f}{\partial t}+\mu S\frac{\partial f}{\partial S}+\frac{1}{2}\sigma^2S^2\frac{\partial^2f}{\partial S^2}\Big)dt+\sigma S\frac{\partial f}{\partial S}dx -(1)$$
上記の派生証券 $f$ を複製するような株式と債券からなるポートフォリオ $F$ を考えます。時刻 $t$ での株式の量 $\alpha$ を、債券の量を $\beta$ とします。
$$F(t)=\alpha_tS(t)+\beta_tB(t) -(2)$$$$dF=\alpha_tdS+\beta_tdB -(3)$$
(3)に②と③を代入すると、
$$dF=(\alpha_t\mu S+\beta_t rB)dt+\alpha_t\sigma Sdx -(4)$$
$f=F$ として、(4)と(1)を比べると、
$$\alpha_t=\frac{\partial f}{\partial S}$$
$\alpha_t$ を(2)に代入すると、
$$\beta_t=\frac{1}{B}\Big(f-S\frac{\partial f}{\partial S}\Big)$$
これらより(4)を書き換えると、
$$df=\Big(\mu S\frac{\partial f}{\partial S}+rf-rS\frac{\partial f}{\partial S}\Big)dt+\sigma S\frac{\partial f}{\partial S}dx -(5)$$
(1)と(5)の第1項の括弧の中を等しいと置くと、ブラック–ショールズ方程式が得られます。
$$\frac{\partial f}{\partial t}+\mu S\frac{\partial f}{\partial S}+\frac{1}{2}\sigma^2S^2\frac{\partial^2f}{\partial S^2}=\mu S\frac{\partial f}{\partial S}+rf-rS\frac{\partial f}{\partial S}$$
$$\frac{\partial f}{\partial t}+rS\frac{\partial f}{\partial S}+\frac{1}{2}\sigma^2S^2\frac{\partial^2f}{\partial S^2}=rf$$
ブラック・ショールズの評価式
ブラック–ショールズ方程式は、一般に解析解を得ることはできませんが、ヨーロピアン・コールオプションについては解析解を得ることができます。
権利行使価格 $K$ 、満期 $T$ で、期間[$0,T$]中に配当支払いはなく、一定金利 $r$(複利)の場合、ブラック–ショールズの解は以下で表されます。
$$f(S,t)=SN(d_1)-Ke^{-r(T-t)}N(d_2)$$$$d_1\equiv\frac{\ln{(S/K)}+(r+\sigma^2/2)(T-t)}{\sigma\sqrt{T-t}}$$$$d_2\equiv\frac{\ln{(S/K)}+(r-\sigma^2/2)(T-t)}{\sigma\sqrt{T-t}}$$
ここで $N(x)$ は累積正規分布関数です。
$$N(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^xe^{-\xi^2/2}d\xi$$
満期での価格
満期 $t=T$ での価格 $f$ は、株価 $S$ と権利行使価格 $K$ の大小関係で変わります。
$S\gt K$ | $d_1=d_2=+\infty$ | $N(+\infty)=1$ | $f(S,T)=S-K$ |
$S\lt K$ | $d_1=d_2=-\infty$ | $N(-\infty)=0$ | $f(S,T)=0$ |
これらは、以下のヨーロピアン・コールオプションの値 $C(S,T)$ と一致することが分かります。
$$C(S,T)=\mathrm{max}(S-K,0)$$
コールオプションを購入では、原資産の価格が権利行使価格より上がった場合、プレミアム分を除外すると、その差分が利益となります。

