甘露門とは

/仏典

甘露門とは

甘露門(かんろもん)とは、甘露の法門の略称であり、甘露とは古代インドから伝えられる不老不死の霊薬で、それが転じて涅槃(仏の教え)を意味するようになりました。甘露門は、禅宗でお盆などの施食会に際して読誦される式文です。

甘露門は、甘露のように清らかで慈悲深い仏の法を通じて、飢えと渇きに苦しむ存在(特に餓鬼道の衆生)に供養と救済の功徳を施す教えであり儀式体系です。

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奉請三宝

仏前での礼拝や祈願などあらゆる場面の最初に唱える導入の句として用いられます。三宝(仏・法・僧)への帰依を誓うことで、これからの修行が正しい方向へ導かれるよう願います。

奉請三宝ぶしょうさんぼう
南無十方佛なむじっぽうぶつ南無十方法なむじっぽうほう南無十方僧なむじっぽうそう南無本師釋迦牟尼佛なむほんししゃかむにぶつ
南無大慈大悲なむだいずだいひ救苦きゅうく観世音菩薩かんぜおんぼさつ南無啓教阿難尊者なむけいきょうあなんそうじゃ

十方(あらゆる世界)におられる仏さまに帰依します。十方に広がる仏法(教え)に帰依します。十方におられる修行者や僧侶たちに帰依します。私たちの教えの源である釈尊さまに帰依します。深い慈しみで苦しむ人々を救ってくださる観音さまに帰依します。仏教の教えを広めてくれた尊者アーナンダに帰依します。

招請発願

「施餓鬼供養」で唱えられる文の一部です。餓鬼(飢えと渇きに苦しむ存在)への食事の施しを通じて、彼らの苦しみを和らげ、功徳を回向(自分が積んだ善行の功徳を他者のために回すこと)するという非常に慈悲深い内容です。

招請発願ちょうしょうほつがん
是諸衆等ぜしょしゅとう發心ほっしんして一器いっき浄食じょうじき奉持ぶじして、
あまね十方窮盡虚空じっぽうぐうじんこくう周遍法界微塵刹中しゅうへんほっかいみじんせっちゅう所有國土しょうこくど一切いっさい餓鬼がきほどこす。

この場に集まっているあらゆる衆生たちは、清らかな心で、清らかな食べ物を一つ用意し、それを十方(すべての世界)の果て、空の果て、無数の仏の世界に広がる、すべての餓鬼たちに施します。

先亡久遠山川地主乃至曠野せんもうくおんさんせんちしゅないしこうや諸鬼神等しょきじんとうってここあつまれ、れいま悲愍ひみんして、あまねなんじじきほどこす。

また、すでに亡くなった先祖、長い昔に亡くなった者たち、山川、大地、そして荒野にいるさまざまな霊たちよ、ここへ集まりなさい。私は今、深い慈しみの心で、皆に食べ物を施します。

ねがわくは汝各各なんじかくかくじきけて、てんって、盡虚空界じんこくうかい諸佛及聖しょぶつぎゅっしょう一切いっさい有情うじょう供養くようして、なんじ有情うじょうあまね皆飽満みなぼうまんせんことを。

願わくば、あなたたち一人ひとりが、この私の食事を受け取り、さらにそれを回して、
果てしない空の広がりにいる仏たち、聖なる存在たち、そしてすべての生き物たちに供養してください。そうすれば、あなたたちも、他の生き物たちも、みな満ち足りるでしょう。

亦願またねがわくはなんじ呪食じゅじきじょうじて、はなれて解脱げだつし、てんしょうじてらくけ、十方じっぽう浄土じょうどこころしたがって遊往ゆおうし、菩提心ぼだいしんはっし、菩提道ぼだいどうぎょうしし、當来とうらい作佛さぶつして、なが退轉たいてんなく、さきどうものは、ちかって相度脱あいどだっせんことを。
又願またねがわくは汝等なんじら晝夜恒常ちゅうやごうじょうに、われ擁護ようごして、所願しょがんまんぜんことを。ねがわくはじきほどこす。

さらに願います。あなたたちの体がこの加持された食べ物の力により、苦しみから離れ、自由となり、天に生まれて幸せを受け取り、十方の清らかな仏の世界へ自由に旅できるように。そこで菩提心(悟りを目指す心)を起こし、悟りの道を歩み、いずれ仏となって、二度と後退せず、すでに道を得た者たちと共に、他の者たちを導く存在となりますように。また願います。あなたたちが昼も夜も絶えず、私を守り、私の願いを叶える手助けをしてくれますように。

所生しょしょう功徳くどくあまねもっ法界ほっかい有情うじょう廻施えせして、もろもろ有情うじょう平等苦有びょうどうぐうならん、もろもろ有情うじょうともに、おなじくふくもって、ことごともっ真如法界しんにょほっかい無上むじょう菩提ぼだい一切智智いっさいちち廻向えこうして、ねがわくはすみやかに成佛じょうぶつして、餘果よかまねくことなからん。

これらにより生まれる功徳を、すべての生きるものに回向し、苦しみの中にある者たちとも平等に分け合いましょう。この福徳を持って、真理の世界、悟りの道、そして最高の智慧へと向かい、早く仏となって、迷いの果報を招くことのないように。

法界ほっかい含識がんじきねがわくは此法このほうじょうじて、成佛じょうぶつすることん。

この法界(すべての存在の世界)にある意識あるすべての者たちよ、どうかこの法(教え)の力に乗って、早く仏となることができますように。

雲集鬼神招請陀羅尼

如来や菩薩に対して深い尊敬と帰依の心を表すマントラ(陀羅尼)です。音そのものに力があるとされ、特に真言宗や密教系の宗派で大切にされます。「曩謨」とは帰依すること(南無)、「布哩」は悟り(菩提)を表します。

雲集鬼神招請陀羅尼うんしゅうきじんちょうしょうだらに
曩謨歩布哩のうぼーぼほり迦哩多哩ぎゃりたり怛他蘗多也たたーぎゃたや
Namo Bodhisattva Kṣitigarbha Tathāgata

悟りの境地にある如来に、心から帰依いたします。

破地獄門開咽喉陀羅尼

如来への称賛・帰依を表わし、言葉そのものよりも音の響きに功徳があるとされます。「怛他蘗多也」は如来(真理を得た者)を表します。

破地獄門開咽喉陀羅尼はじごくもんかいいんこうだらに
唵歩布帝哩おんぼーほていえり迦多哩ぎゃたり怛他蘗多也たたぎゃたや
Om Bodhi-kātarī Tathāgata

悟りを開いた如来に帰依し、すべての煩悩を断ち切る智慧の力を称えます。

無量威徳自在光明加持飲食陀羅尼

施餓鬼法要などで唱えられ、餓鬼道に堕ちた霊や苦しむ存在に対し、食と加持の力を届けるために使われます。「三婆羅三婆羅吽」は、悪を封じ、清める強力な結びの言葉とされます。

無量威徳自在光明加持飲食陀羅尼むりょういとくじざいこうみょうかじおんじきだらに
曩莫のうまく薩嚩さらば怛佗蘗多たたーぎゃた嚩嚕吉帝ばろきてい唵三婆羅おんさんばら三婆羅吽さんばらうん
Namo Sarva Tathāgata Vajra-keti, Om Samvara Samvara Hū

すべての如来に帰依します。金剛のように壊れぬ力をもつ仏に帰依します。どうかこの祈りが成就し、悪しきものが封じられ、守られますように。すべての存在が安らぎますように。

蒙甘露法味陀羅尼

とくに施餓鬼供養や水供養などで唱えられ、水に関する加持や清浄のための真言として知られています。この真言を唱えることで、ただの水が仏の力に満ちた「甘露の水」となり、苦しむ魂を癒し、浄化と救済の働きを持つとされます。

蒙甘露法味陀羅尼もうかんろほうみだらに
曩莫のうまく蘇嚕頗也そろばや怛佗蘗多也たたぎゃたや怛儞也佗たにやた唵蘇嚕蘇嚕おんそろそろ鉢羅蘇嚕はらそろ鉢羅蘇嚕はらそろ娑嚩賀そわか
Namo Surupāya Tathāgatāya Tadyathā, Om Sulu Sulu Hala Sulu Hala Sulu Svāhā

水のように清らかな姿を持つ如来に帰依し、真言を唱えます。清らかな水よ、流れ出て、あらゆるものを清め、浄化してください。願わくはこの加持の力が成就しますように。

毘盧舎那一字心水輪観陀羅尼

この真言は、短いながらも深い意味を持つ「三曼多仏の真言」として知られています。特に密教系の宗派において、仏や菩薩への礼拝・供養・加持の導入部として唱えられることがあります。

毘盧舎那一字心水輪観陀羅尼びるしゃないちじしんすいりんかんだらに
曩莫のうまく三満多さんまんだ没多南鑁ぼたなんばん
Namo Samanta Buddhānā

あらゆる仏たちに、帰依いたします。

五如来寶號招請陀羅尼

「五如来真言」とも呼ばれるもので、施餓鬼供養や施食法要などで、餓鬼や亡者に福徳・安心・満足を与えるために唱えられる真言です。

五如来寶號招請陀羅尼ごにょらいほうごうちょうしょうだらに
南無多寶如来なむたほうにょらい曩謨薄伽筏帝のうぼうばぎゃばてい鉢羅歩多はらぼた阿羅怛曩也あらたんのうや怛他蘗多也たたぎゃたや除慳貧業じょけんとんごう福智圓満ふくちえんまん
Namo Ratna-traya Tathāgata, Bhagavate Prabhūta Ratnāya Tathāgatāya

多宝如来に帰依します。あらゆる福徳を具えた仏よ、どうか私たちの貪りと貧しき因縁を除き、福徳と智慧を円満にしてください。

南無妙色身如来なむみょうしきしんにょらい曩謨簿伽筏帝のうぼうばぎゃばてい蘇嚕波耶そろばや怛侘蘗多也たたぎゃたや破醜陋形はしゅうろうぎょう圓満相好えんまんそうこう
Namo Suvarṇa-varṇa Tathāgata, Bhagavate Surūpāya Tathāgatāya

妙色身如来に帰依します。美しい姿を備えた仏よ、どうか私たちの醜い姿や劣った業報を取り除き、円満な姿を与えてください。

南無甘露王如来なむかんろおうにょらい曩謨婆伽筏帝のうぼうばぎゃばてい阿蜜栗帝あみりてい阿濫惹耶あらんじゃや怛他蘗多耶たたぎゃたや灌法身心かんぼうじんじん令受快楽りょうじゅけらく
Namo Amṛta-rāja Tathāgata, Bhagavate Amṛte Alañjāya Tathāgatāya

甘露王如来に帰依します。甘露の法を注ぎ、私たちの身と心を潤して、安楽を授けてください。

南無廣博身如来なむこうはくしんにょらい曩謨婆伽筏帝のうぼうばぎゃばてい尾布邏蘗怛羅耶びほらぎゃたらや多佗蘗多也たたぎゃたや咽喉廣大いんこうこうだい飲食充飽おんじきじゅうぼう
Namo Vipula-śarīra Tathāgata, Bhagavate Vipula-kandharāya Tathāgatāya

広博身如来に帰依します。喉を大きく開き、食物を受け取ることができるようにし、飢えを満たしてください。

南無離怖畏如来なむりふいにょらい曩謨婆伽筏帝のうぼうばぎゃばてい阿婆演あばえん迦羅耶ぎゃらや多佗蘗多耶たたぎゃたや恐怖悉除くうふしつじょ離餓鬼趣りがきしゅ
Namo Abhaya Tathāgata, Bhagavate Abhaya-kārāya Tathāgatāya

離怖畏如来に帰依します。すべての恐怖を取り除いて、餓鬼の世界から離れることができますように。

發菩提心陀羅尼

密教における大地の加持・供養や結界に関連するものと考えられます。特に「冐地即多」という音写は、大地を霊的に清め、浄域とする役割が強く表れていると解釈することができます。

發菩提心陀羅尼ほつぼだいしんだらに
おん冐地即多ぼうじしった母陀ぼだ波多野迷はだやみ
Om Bhūmisiddha Bodha Bhadrame

大地の力を得た覚者よ、その吉祥なる智慧をもって、この場を守り、加持したまえ。

授菩薩三摩耶戒陀羅尼

真言宗や東密では護摩供や結界作法の一環として唱えられ、仏との深い誓いを確認し、修行者として清らかな心で道を歩む決意を表す神聖な言葉です。「三昧耶薩坦鑁」という音写は、金剛界大日如来に関係しています。

授菩薩三摩耶戒陀羅尼じゅぼさつさんまやかいだらに
おん三昧耶薩坦鑁さんまやさとばん
Om Samaya Sattva

私は大日如来と誓願によって結ばれています。

大寶楼閣善住秘密陀羅尼

これは施餓鬼供養や除災延命祈願などで唱えられ、密教における荘厳で深遠な大悲陀羅尼(千手観音菩薩の真言)の抜粋である可能性があります。

大寶楼閣善住秘密陀羅尼だいほうろうかくぜんじゅうひみつだらに
曩莫のうまく薩羅嚩さらば多他蘗多南たたーぎゃたなんおん尾補羅蘗羅陛びほらぎゃらべい麼抳鉢囉陛まにはらべい
多佗多尼多捨寧たたたにたしゃに摩尼摩尼まにまに蘇鉢囉陞そはらべい尾麼黎びまれい娑蘗囉儼鼻隷しゃぎゃらげんびれい
吽吽うんぬん入縛羅じんばら入縛羅じんばら没駄ぼだ尾盧枳帝びろきてい
麌四夜ぐぎゃ地瑟恥多ちしゅった蘗羅陛ぎゃらべい娑縛訶そわか
おん摩尼まに縛日哩ばじれいうんおん麼尼まに駄哩吽泮乇だれいうんばった
namo sarva tathāgatānām, Loka-vipula-parabhā mani-prabhā
tathāgatānī-taśanī maṇi maṇi suvaraśī, vimali svabhāva gambhīre hūṃ hūṃ
nivrā nivrā mudra vilokite
guhya jñāna-prabhe svāhā
Om Maṇi Vajra Hūṃ, Om Maṇi Dāri Hūṃ phaṭ

あらゆる如来に帰依します。広大なる世界を照らす光明の如来よ、宝のごとき光であれ。
如来の教えを説き、摩尼(如意宝珠)の智慧よ、音声をもって照らしたまえ。清浄にして、深遠なる本性よ。
縛りを解き、印契を結び、観照の目をもって世を見よ。
秘密の智慧の光よ、成就あれ。
摩尼宝珠よ、金剛の力とともに成就せよ。如意宝珠よ、裂けるように悪を破し、力を示せ。

諸仏光明真言灌頂陀羅尼

この真言は、仏の力により悪を制し、守護と加護を願うための真言であり、特に密教・修験道などの現場で使用されることが考えられます。

諸仏光明真言灌頂陀羅尼しょぶつこうみょうしんごんかんちょうだらに
おん阿暮伽あぼきゃ癈嚕者娜べいろしゃのう摩訶畝陀羅まかぼだら麼尼盤頭麼まにはんどま入縛囉じんばら跛囉婆利はらばり單野吽たやうん
Om, Amogha, Vairochana, Mahāmudrā, Maṇi-bandhama, Nivāra, Bharavari, Dānya Hūṁ

成就の仏、毘盧遮那如来よ、偉大なる仏の印をもって、宝珠の智慧で悪を縛り、
一切の障碍を打ち砕き、守護を施したまえ。
すべての願いが成就し、障りなき道が開けますように。

回向

法要や写経の結びなどに使われる回向文(功徳を他者に振り向ける祈り)の一つで、特に修行や供養の功徳を、父母や衆生に広く及ぼすことを願った詞(ことば)です。

回向えこう
以此修行衆善根いーすーしゅうあんしゅうせんげん報答父母劬労徳ほーとーぶーもーきーろーてー存者福楽壽無窮そんしゃーふーらーじゅうぶーきゅう
亡者離苦生安養もうしゃーりーくーさんなんよう四恩三有諸含識すーいんさんゆうしいあんしい三途八難苦衆生さんずーはーなんくーしゅんさん
倶蒙悔過洗瑕疵きゅうもうくいこうせんなんすう盡出輪回生浄土じんしゅうりんぬいさんじんずー

この修行によって得たすべての功徳をもって、父母の深い恩と苦労に報い、生きている者に福と楽しみがあり、命が尽きることなく、亡くなった者には苦しみから解放され、極楽浄土に生まれ変われますように。
四つの恩(父母・師・国・衆生)と、三界(欲界・色界・無色界)に生きるすべての存在たち、また、三悪道や八つの障害に苦しむ衆生たちも、ともに罪を悔い、心の汚れを洗い清めて、輪廻の迷いを脱し、清らかな浄土に生まれますように。

 

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