クライン・ゴルドン方程式とは

/場の量子論

クライン・ゴルドン方程式

クライン・ゴルドン方程式とは、非相対論的なシュレディンガー方程式の相対論への拡張として提案されました。クライン・ゴルドン方程式は以下で表されます。

$$\Big(\Box+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\Big)\phi(t,{\bf r})=0  -①$$

ここで”$\Box$”はダランベルシアンと呼ばれ、ナブラ記号($\nabla$)により以下で定義されます。

$$\Box\equiv\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}-\nabla^2=\frac{\partial^2}{\partial x^j\partial x_j}$$

尚、$m$ は質量、$c$ は光速度、$\hbar$ はディラックの定数です。

クライン・ゴルドン方程式を導く

クライン・ゴルドン方程式を導く方法を2つ示します。

演算子の置換え

特殊相対性理論から得られる以下の関係式を使って、

$$E^2=c^2{\bf p}^2+m^2c^4$$

から、以下の類推によって置き換えを施します。

$${\bf p}\to-i\hbar\nabla  ,  E\to i\hbar\frac{\partial}{\partial t}$$

ラグアジアンから導く

ラグラジアン密度($L$)を、

$$L=\frac{1}{2}\Big(\frac{\partial\phi}{\partial x^j}\frac{\partial\phi}{\partial x_j}-\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\phi^2\Big)\equiv\frac{1}{2}(\phi_{,j}\psi_{,}^j-\mu^2\phi^2)$$

以下のオイラー・ラグランジュ方程式に代入します。

$$\frac{\partial L}{\partial\phi}-\frac{\partial}{\partial x^j}\Big(\frac{\partial L}{\partial\phi_{,j}}\Big)=0$$

左辺の第2項からダランベルシアンが得られます。

クライン・ゴルドン方程式の解

以下は、1次元でのクライン・ゴルドン方程式で考えます。

$$\Big(\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}-\frac{\partial^2}{\partial x^2}+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\Big)\phi(t,x)=0  -①$$

境界条件として、一辺 $2L$($-L\le x\le L$)の周期性を仮定すると、波動関数はフーリエ級数の形で展開することができます。

$$\phi(t,x)=\sum_{{\bf n}=-\infty}^\infty q_n(t)f_n(x)  -②$$$$f_n(x)=\sqrt{\frac{1}{2L}}e^{in\pi x/L}  -③$$

③の直行性により、$q_n(t)$ は以下で求められます。

$$q_n(t)=\int_{-L}^Ld^3xf_n^*(x)\phi(t,x)  -④$$

このとき、$q_n$ は以下の単振動の方程式を満たすことが導かれます。

$$\ddot{q}_{\bf n}(t)+\omega_n^2q_n(t)=0  -⑤$$$$\omega_n\equiv\frac{c}{\hbar}\sqrt{p_x^2+(mc)^2}$$

これより、クライン・ゴルドン方程式は無数の調和振動子の表していることが分かります。続いて③より、

$$f_{-n}(x)=f_n^*(x)  -⑥$$

④⑥と、クライン・ゴルドン場が実数解 $\phi^*=\phi$ であることより、

$$q_n^*(t)=q_{-n}(t)  -⑦$$

以上より、クライン・ゴルドン場は、次元のない量 $a_n,a_n^*$ により以下で表されます。

$$\phi(t,x)=\sum_n\sqrt{\frac{c\hbar}{2\omega_n}}\Big(a_ne^{-i\omega_nt}f_n(x)+a_n^*e^{i\omega_nt}f_n^*(x)\Big)  -⑧$$

③を導く

$f_n(x)$ が周期性と直交性を満たすことを示します。まず、周期性については以下のように示すことができます。

$$f_n(x\pm 2L)=\sqrt{\frac{1}{2L}}e^{in\pi(x\pm 2L)/L}$$$$=\sqrt{\frac{1}{2L}}e^{in\pi x/L}e^{\pm2\pi in}=f_n(x)$$

次に直交性については、

$$\int_{-L}^Lf_n^*(x)f_m(x)dx=\frac{1}{2L}\int_{-L}^Le^{i(m-n)\pi x/L}dx$$

$n=m$ の場合は、この積分は明らかに1になります。また、$n\ne m$ の場合は、以下より0になることが分かります。

$$\frac{1}{2L}\int_{-L}^Le^{i(m-n)\pi x/L}dx=\frac{\sin{(m-n)\pi}}{(m-n)\pi}=0$$

⑤を導く

運動量の演算子、

$$p_x=-i\hbar\frac{\partial}{\partial x}$$

で①を書き換えて、

$$\Big(\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2}+\frac{p_x^2}{\hbar^2}+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\Big)\phi(t,x)=0$$

これに②を代入すると、

$$\sum_n\left[\frac{1}{c^2}\ddot{q}_n+\Big(\frac{p_x^2}{\hbar^2}+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\Big)q_n(t)\right]f_n(x)=0$$

これに $\omega_n$ の定義を使うと④が得られます。

⑧を導く

⑤の解は一般的に以下になり、

$$q_n(t)=A_ne^{-i\omega_nt}+B_ne^{i\omega_nt}$$

⑦の条件より、$B_n=A_{-n}^*$ となるため、②は、

$$\phi(t,x)=\sum_{{\bf n}=-\infty}^\infty\Big(A_ne^{-i\omega_nt}+A_{-n}^*e^{i\omega_nt}\Big)f_n(x)$$

この第2項で $n\to -n$ として、$\omega_{-n}=\omega_n$ と⑥より、

$$\phi(t,x)=\sum_{{\bf n}=-\infty}^\infty\Big(A_ne^{-i\omega_nt}f_n(x)+A_n^*e^{i\omega_nt}f_n^*(x)\Big)$$

波動関数の次元は $\phi\sim\sqrt{\hbar}/L$ 、$f_n$ の次元は③より $f_n\sim L^{-3/2}$(3次元の場合)であるため、係数 $A_n\sim\sqrt{\hbar L}\sim\sqrt{c\hbar/\omega}$ となるため、改めて無次元量を $a_n$ 以下で定義すると⑧が得られます。

$$A_n\equiv\sqrt{\frac{c\hbar}{2\omega_n}}a_n$$

 

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