ベルヌーイの定理とは

/連続体力学

ベルヌーイの定理とは

ベルヌーイの定理とは、理想流体の定常状態において、流体の速さと圧力と外力のポテンシャルの関係を表す式で、エネルギーの保存則に相当する定理です。

定常状態において、任意の流線とそれを通る全ての渦線により作られるベルヌーイ面上で、以下の式が成り立ちます。ここで $p$ は圧力、$\rho$ は密度、$v$ は速度、$U$ は保存力のポテンシャルを表します。

$$\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U=\mathrm{const} (\mbox{ベルヌーイ面})  -①$$

尚、流線とは、その各点の接線の方向が速度ベクトル ${\bf v}$ の方向と一致するような曲線で、渦線とは、その各点の接線の方向が以下で定義される渦線ベクトル ${\bf\omega}$ の方向と一致するような曲線です。

$${\bf\omega}\equiv\nabla\times{\bf v}  -②$$

また、外力 ${\bf K}$ が保存力である場合は、ポテンシャル $U$ と以下の関係があります。

$${\bf K}=-\nabla U  -③$$

特に外力が重力 $U=gz$ である場合、ベルヌーイの定理は以下のように表すことができます。

$$\frac{1}{2}\rho{\bf v}^2+p+\rho gz=\mathrm{const}  -④$$

ベルヌーイの定理の導出

ベルヌーイの定理は、以下の流体の運動方程式から導かれます。

$$\rho\frac{\partial{\bf v}}{\partial t}+\rho({\bf v}\cdot\nabla){\bf v}=-\nabla p+\rho{\bf K}$$

渦度ベクトル ${\bf\omega}$ を使って、左辺第2項を書き換えると、

$$({\bf v}\cdot\nabla){\bf v}=\nabla\Big(\frac{1}{2}{\bf v}^2\Big)+{\bf\omega}\times{\bf v}$$

これにより流体の運動方程式は以下になります。

$$\frac{\partial{\bf v}}{\partial t}+{\bf\omega}\times{\bf v}=-\nabla\Big(\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}\Big)+{\bf K}  -⑤$$

定常状態かつ保存力の場合

定常状態でかつ外力が保存力の場合、任意の流線とそれを通る全ての渦線により作られるベルヌーイ面上で、以下の式が成り立ちます。

$$\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U=\mathrm{const} (\mbox{ベルヌーイ面})  -①$$

①の導出

⑤で定常状態 $\partial/\partial t=0$ とし、③を使うと、

$${\bf\omega}\times{\bf v}=-\nabla\Big(\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U\Big)$$

この両辺にそれぞれ ${\bf v}$ と ${\bf\omega}$ を掛けると、

$$({\bf v}\cdot\nabla)\Big(\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U\Big)=0$$$$({\bf\omega}\cdot\nabla)\Big(\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U\Big)=0$$

これより、①の左辺は、流線または渦線の沿って一定に保たれることが分かります。

渦なし流の場合

⑤で渦なし ${\bf\omega}=0$(または、渦線と流線が平行 ${\bf\omega}\parallel{\bf v}$ )の場合は以下で表すことができます。尚、$\Phi$ は速度ポテンシャルです。

$$\nabla\Big(\frac{\partial\Phi}{\partial t}+\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}\Big)={\bf K}  -⑥$$$${\bf v}\equiv\nabla\Phi$$

この式は③と同じ形を持つことから、渦なし流の場合の外力は、常に保存力である(保存力でない場合は渦なし流は起こらない)ことが分かります。⑥の左辺の括弧の中を $-U$ と置いて積分し、$f$ を時間依存する任意の関数とすると、ベルヌーイの定理は以下で表されます。

$$\frac{\partial\Phi}{\partial t}+\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U=f(t)  -⑦$$

定常状態かつ渦なし流の場合

⑦で定常状態 $\partial/\partial t=0$ 、あるいは、①の導出過程で渦なし ${\bf\omega}=0$(または、渦線と流線が平行 ${\bf\omega}\parallel{\bf v}$ )の場合は、以下のベルヌーイの定理は(ベルヌーイ面上に限らず)全ての流れの場で成り立ちます。

$$\frac{1}{2}{\bf v}^2+\frac{p}{\rho}+U=\mathrm{const} (\mbox{全流場})  -①$$

 

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