最小作用の原理とは
最小作用の原理とは、ある条件下で実際に起こる運動は、作用積分が停留値をもつような運動であることを示したものです。本記事では、最小作用の原理の定式化とその導出方法について説明します。
作用積分 $S$ は運動エネルギー $K$ の時間積分として定義されます。
$$S\equiv\int_{t1}^{t2}2Kdt$$
最小作用の原理は、作用積分がある条件下で停留値を持つ条件として表されます。ある条件下とは、質点系が保存力による作用を受けている場合で、最初の状態から最後の状態に移る過程で束縛条件に従う運動です。
$$\delta S=\delta\int_{t1}^{t2}2Kdt=0$$
最小作用の原理を導く
ここでは、18世紀にモーペルテュイにより見出された手順に沿って進めます。作用積分の微小変位は以下のように書くことができます。
$$\delta S=\int_{t1}^{t’2}2K’dt’-\int_{t1}^{t2}2Kdt -①$$
以下、$\delta S=0$ となることを示します。
時刻の差分
ハミルトンの原理と異なり、始点の時刻 $t_1$ が同じでも、一般に終点の時刻は異なります。つまり、$t’=t+\delta t$ であり $dt’=dt+d(\delta t)$ であるため、以下が得られます。
$$dt’=\frac{dt’}{dt}dt=\left(1+\frac{d(\delta t)}{dt}\right)dt -②$$
$$\frac{dt}{dt’}=\frac{dt}{dt+d(\delta t)}=1-\frac{d(\delta t)}{dt} -③$$
③の最後の計算は、分子と分母に $dt-d(\delta t)$ を掛けて、$\delta$ の2乗の項を無視しています。
運動エネルギーの計算
まず、速度の差分を計算します。$x’=x+\delta x$ より以下が得られます。最後は③を使い、$\delta$ の2乗の項を無視しています。
$$\delta\dot{x}=\frac{dx’}{dt’}-\frac{dx}{dt}=\frac{d(x+\delta x)}{dt}\frac{dt}{dt’}-\frac{dx}{dt}=-\frac{dx}{dt}\frac{d(\delta t)}{dt}+\frac{d(\delta x)}{dt}$$
運動エネルギーは、${\ r}=(x,y,z)$ とすると $K=m\dot{{\bf r}}^2/2$ であるため、微小変位を取ると以下になります。
$$\delta K=m\dot{{\bf r}}\cdot(\delta\dot{{\bf r}})=-m\dot{{\bf r}}^2\frac{d(\delta t)}{dt}+m\dot{{\bf r}}\cdot\left(\frac{d(\delta {\bf r})}{dt}\right)$$
この式の時間積分を行い、第2項の部分積分を行います。
$$\int_{t1}^{t2}\delta Kdt=-\int_{t1}^{t2}2Kd(\delta t)+\Big[m\dot{{\bf r}}\cdot(\delta{\bf r})\Big]_{t1}^{t2}-\int_{t1}^{t2}m\ddot{{\bf r}}\cdot(\delta{\bf r})dt$$
始点と終点では微小変位は0であるため、第2項は0になります。第3項は保存力 $F$ を使って書き換えます。
$$\int_{t1}^{t2}\delta Kdt=-\int_{t1}^{t2}2Kd(\delta t)-\int_{t1}^{t2}{\bf F}\cdot(\delta{\bf r})dt$$
第3項は保存力による仕事を表しますが、これは位置エネルギー $V$ の減少であり、運動エネルギーの増加を表します。つまり、${\bf F}\cdot(\delta{\bf r})=-\delta V=\delta K$ を代入して整理すると以下になります。
$$\int_{t1}^{t2}2\delta Kdt+\int_{t1}^{t2}2Kd(\delta t)=0 -④$$
作用積分の計算
①に $K’=K+\delta K$ と②を代入し、$\delta$ の2乗の項を無視すると以下が得られます。
$$\delta S=\int_{t1}^{t2}2Kd(\delta t)+\int_{t1}^{t2}2\delta Kdt$$
従って、④より $\delta S =0$ となることが示されます。

