軌道角運動量とは

/量子力学

軌道角運動量

軌道角運動量は、電子の公転に相当し、その固有値は中心力場(水素原子モデル)でシュレディンガー方程式を解くことで求められます。

中心力場のシュレディンガー方程式
水素原子、極座標、球関数の固有値、角運動量演算子、主量子数、方位量子数、磁気量子数、ボーアの原子模型

軌道角運動量に相当する演算子で重要なものは、$l^2$、$l_z$、$l_\pm$ の3つです。

軌道角運動量の大きさの2乗

軌道角運動量の大きさの2乗の固有値は $\hbar^2l(l+1)$ となります。尚、$Y_l^m$ は固有関数です。

$$l^2Y_l^m=\hbar^2l(l+1)Y_l^m  -①$$

これを行列表示すると以下になります。

$$l^2Y_l^m\to \hbar^2\left(\begin{array}{ccc} l(l+1) & & & 0 \\
& l(l+1) & &  \\
& & \ddots &  \\
0 & & & l(l+1) \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} Y_0^0 \\ Y_1^1 \\ \vdots \\ Y_l^{-l} \end{array}\right)$$

軌道角運動量の $z$ 成分

軌道角運動量の $z$ 成分の固有値は $m\hbar$ となります。$m$ の範囲は{$-l\le m\le l$}です。

$$l_zY_l^m=m\hbar Y_l^m  -②$$

これを行列表示すると以下になります。

$$l_zY_l^m\to \hbar\left(\begin{array}{ccc} l & & & & \\
& l-1 & & & 0 \\
& & \ddots & & \\
& & & -l+1 & \\
0 & & & & -l \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} Y_l^l \\ Y_l^{l-1} \\ \vdots \\ Y_l^{-l+1} \\ Y_l^{-l} \end{array}\right)$$

磁気量子数を上げ下げする演算子

$l_\pm$($=l_x\pm il_y$)は $m$ を1つ上げ下げする演算子としての役割を持ちます。

$$l_\pm Y_l^m=\hbar\sqrt{(l\mp m)(l\pm m+1)}Y_l^{m\pm1}  -③$$

これを行列表示すると以下になります。例えば、$l_+$ が $Y_l^{l-1}$ に作用すると、$\sqrt{1\cdot2l}Y_l^l$ になることが分かります。

$$l_+Y_l^m\to \hbar\left(\begin{array}{ccc} 0 & \sqrt{1\cdot2l} & 0 & \cdots & 0 \\
0 & 0 & \sqrt{2\cdot(2l-1)} & \cdots & 0 \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
0 & 0 & 0 & \cdots & \sqrt{2l\cdot1} \\
0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} Y_l^l \\ Y_l^{l-1} \\ \vdots \\ Y_l^{-l+1} \\ Y_l^{-l} \end{array}\right)$$

また、$l_-$ が $Y_l^l$ に作用すると、$\sqrt{2l\cdot1}Y_l^{l-1}$ になることが分かります。

$$l_-Y_l^m\to \hbar\left(\begin{array}{ccc} 0 & 0 & \cdots & 0 & 0 \\
\sqrt{2l\cdot1} & 0 & \cdots & 0 & 0 \\
0 & \sqrt{(2l-1)\cdot2} & \cdots & 0 & 0 \\
\cdots & \cdots & \cdots & \cdots & \cdots \\
0 & 0 & \cdots & \sqrt{1\cdot2l} & 0 \end{array}\right)
\left(\begin{array}{ccc} Y_l^l \\ Y_l^{l-1} \\ \vdots \\ Y_l^{-l+1} \\ Y_l^{-l} \end{array}\right)$$

演算子の交換関係

軌道角運動量の演算子は次で表されるため、

$${\bf l}=-i\hbar{\bf r}\times\nabla$$

以下の交換関係を持つことが分かります。

$$[l_x,l_y]=l_xl_y-l_yl_x=i\hbar l_z  -④$$$$[l_y,l_z]=l_yl_z-l_zl_y=i\hbar l_x  -⑤$$$$[l_z,l_x]=l_zl_x-l_xl_z=i\hbar l_y  -⑥$$

この関係式を使うと、演算子 $l_\pm$ については以下の交換関係が成り立つことが分かります。これは、行列表示でも同じ結果が成り立ちます。

$$[l_+,l_-]=l_+l_- -l_-l_+=2\hbar l_z  -⑦$$

$$l_\pm\equiv l_x\pm il_y$$

④を導く

④の右辺に運動量の定義を代入すると、

$$[l_x,l_y]=l_xl_y-l_yl_x$$$$=-\hbar^2\left[\Big(y\frac{\partial}{\partial z}-z\frac{\partial}{\partial y}\Big)\Big(z\frac{\partial}{\partial x}-x\frac{\partial}{\partial z}\Big)-\Big(z\frac{\partial}{\partial x}-x\frac{\partial}{\partial z}\Big)\Big(y\frac{\partial}{\partial z}-z\frac{\partial}{\partial y}\Big)\right]$$$$=-\hbar^2\Big(y\frac{\partial}{\partial x}-x\frac{\partial}{\partial y}\Big)=i\hbar l_z$$

これより⓸が成立つことが分かります。同様に⑤⑥も導かれます。

⑦を導く

⑦の右辺に定義式を代入すると、

$$[l_+,l_-]=[l_x+il_y,l_x-il_y]$$$$=[l_x,l_x]-i[l_x,l_y]+i[l_y,l_x]+[l_y,l_y]$$$$=-2i\hbar[l_x,l_y]=2\hbar l_z$$

これより⑦が成立つことが分かります。

 

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