スレイター行列式とは

/量子力学

スレイター行列式とは

スレイター行列式とは、フェルミ粒子からなる多粒子系の波動関数を表すときに使われる行列式です。

フェルミ粒子は、1つの量子状態に1つの粒子しか存在できず、全系の波動関数は任意の粒子の交換に対し符号を変える(反対称)という特徴を持ちます。2粒子のフェルミ粒子の波動関数は以下のように表すことがで、

$$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2)=\frac{1}{\sqrt{2}}[\phi_1({\bf r}_1)\phi_2({\bf r}_2)-\phi_2({\bf r}_1)\phi_1({\bf r}_2)]$$

これを行列式で表すと以下になります。この行列式をスレイター行列式と呼びます。

$$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2)=\frac{1}{\sqrt{2}}\left|\begin{array}{ccc}
\phi_1({\bf r}_1) & \phi_2({\bf r}_1) \\
\phi_1({\bf r}_2) & \phi_2({\bf r}_2) \end{array}\right|$$

行列式の性質より、フェルミ粒子系の重要な特徴が導かれます。

  1. 2つの粒子を入れ替えると符号は反転する。
    $$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2)=-\Phi({\bf r}_2,{\bf r}_1)$$
  2. 2つの粒子が同じ量子状態をもてない。
    $$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_1)=0$$

尚、$N$ 個のフェルミ粒子の系の波動関数は以下になります。$N$ 個の粒子の並べ方は $N!$ 通りあり、この数の関数が縮退していることになります。

$$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2,\cdots)=\frac{1}{\sqrt{N!}}\left|\begin{array}{ccc}
\phi_1({\bf r}_1) & \phi_2({\bf r}_1) & \cdots \\
\phi_1({\bf r}_2) & \phi_2({\bf r}_2) & \cdots \\
\cdots & \cdots & \cdots \end{array}\right|$$

スレイター行列式を導く

以下、スレイタ―行列式を求めます。

多粒子系の波動関数

多粒子系のシュレディンガー方程式は以下で表されます。

$$H\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2,\cdots)=E\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2,\cdots)  -①$$

$$\int\cdots\int|\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2,\cdots)|^2d{\bf r}_1d{\bf r}_2\cdots=1  -②$$

特に、同種の粒子でかつ相互作用がない場合のハミルトニアンは、次のように分解することができるため、

$$H=\sum_{j=1}^NH_j  ,  H_j\equiv-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla_j^2+V({\bf r}_j)$$

①は次の方程式を解けばよいことになります。

$$\Big(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+V({\bf r})\Big)\phi({\bf r})=\epsilon\phi({\bf r})$$

このとき、固有値を $\epsilon_1,\epsilon_2,\cdots$、固有関数を $\phi_1,\phi_2,\cdots$ とすると、全系の波動関数とエネルギーは以下で表されます。

$$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2,\cdots)=\phi_1({\bf r}_1)\phi_2({\bf r}_2)\cdots$$

$$E=\epsilon_1+\epsilon_2+\cdots$$

同種粒子は区別がつかないため、粒子を入れ替えても①の解になります。

2粒子系の波動関数

簡単のため2粒子で考えます。同種の粒子では、$\phi_1({\bf r}_1)\phi_2({\bf r}_2)$ と $\phi_1({\bf r}_2)\phi_2({\bf r}_1)$ はどちらも①の解になるため、解は一般的に以下で表されます。

$$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2)=C_1\phi_1({\bf r}_1)\phi_2({\bf r}_2)+C_2\phi_1({\bf r}_2)\phi_2({\bf r}_1)$$

ここで、${\bf r}_1$ と ${\bf r}_2$ を入れ替えると、

$$\Phi({\bf r}_2,{\bf r}_1)=C_1\phi_1({\bf r}_2)\phi_2({\bf r}_1)+C_2\phi_1({\bf r}_1)\phi_2({\bf r}_2)$$

これらは、フェルミ粒子の性質より以下の関係が成り立ちます。

$$\Phi({\bf r}_1,{\bf r}_2)=-\Phi({\bf r}_2,{\bf r}_1)$$

これと、規格化条件②からも導かれる以下の条件、

$$|C_1|^2+|C_2|^2=1$$

より、係数を求めることができます。

$$C_1=-C_2=\frac{1}{\sqrt{2}}$$

 

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