自由電子フェルミ気体とは

/物性論

自由電子フェルミ気体とは、パウリの排他律に従う自由電子気体です。

エネルギー準位

シュレディンガー方程式を、一定の境界条件のもとで解くと、離散的なエネルギー準位($\epsilon_n$)を持ちます。以下は、ポテンシャルエネルギーを無視した系を考えます。

$$-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\phi_n=\epsilon_n\phi_n  -①$$

1次元の場合

境界条件が $\phi(0)=\phi(L)=0$ の場合、半波長の整数倍が $L$ となるような正弦波であれば、①が満足されます。この整数倍を表す $n$ は量子数と呼ばれます。

$$\phi_n(x)=A\sin{k_nx}  -②$$$$k_n=\frac{2\pi}{\lambda_n}  ,  \frac{n\lambda_n}{2}=L$$

②を①に代入すると、エネルギー準位は以下になることが分かります。

$$\epsilon_n=\frac{\hbar^2k^2}{2m}$$

3次元の場合

境界条件を周期的にすると、

$$\phi(x+L,y,z)=\phi(x,y+L,z)=\phi(x,y,z+L)=\phi(x,y,z)$$

波動関数は進行平面波となります。${\bf k}$ は波数ベクトルと呼ばれています。

$$\phi_{\bf k}({\bf r})=e^{i{\bf k}\cdot{\bf r}}$$

$${\bf k}=\frac{2\pi}{L}{\bf n}  (n=\pm1,\pm2,\cdots)  -③$$

フェルミ準位

フェルミ準位(${\bf n}_F$)とは、エネルギー準位を下から詰めてたときの、最も高いエネルギー準位です。フェルミ準位でのエネルギー($\epsilon_F$)は以下で表されます。

$$\epsilon_F=\frac{\hbar^2{\bf k}_F^2}{2m}  -④$$

1次元の場合

フェルミ準位と波数の関係は以下になります。

$$k_F=\frac{n_F\pi}{L}$$

パウリの排他律により、1つの量子状態には1個の電子のみが占めることを許されています。但し、1つの量子数に対しスピン向きの上下が縮退していると考えると、フェルミ準位と電子数 $N$ の関係は、$2n_F=N$ となります。

状態密度

状態密度とは、エネルギー準位当たりの電子数を表します。

波数空間の体積 $V$($=4\pi k_F^3/3$)の球内にある状態数を $N$ とすると、フェルミエネルギーは、

$$\epsilon_F=\frac{\hbar^2}{2m}\Big(\frac{3\pi^2N}{V}\Big)^{2/3}  -⑤$$

これにより、状態密度は以下で表されます。尚、最後は⑤を使っています。

$$D(\epsilon)\equiv\frac{dN}{d\epsilon}=\frac{V}{2\pi^2}\Big(\frac{2m}{\hbar^2}\Big)^{3/2}\sqrt{\epsilon}$$$$=\frac{3N}{2\epsilon}$$

状態密度は、次の恒等式が成り立ちます。

$$N=\int_0^\infty D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon=\int_0^{\epsilon_F} D(\epsilon)d\epsilon  -⑥$$

⑤の導出

③より、波数ベクトルは体積要素 $(2\pi/L)^3$ 当り1つ存在するため、半径 $k_F$ の球体内に存在する状態数は、$V=L^3$ とすると、

$$N=2\frac{4\pi k_F^3/3}{(2\pi/L)^3}=\frac{V}{3\pi^2}k_F^3$$

これより、フェルミ球の半径は、

$$k_F=\Big(\frac{3\pi^2N}{V}\Big)^{1/3}$$

これを④に代入すると⑤が得られます。

電子気体の比熱

電子気体の比熱は、温度変化に対する電子気体の熱エネルギーの変化の比で表されます。電子気体が熱せられた場合、古典論でのエネルギー等分配則では、どの電子も $k_BT$ 程度のエネルギーを得ると考えますが、実際はフェルミ面付近の電子のみにエネルギーが付与されます。

$N$ 個の電子気体の温度を0からに熱したときの熱エネルギーの増加は、

$$\Delta U=U(T)-U(0)$$$$=\int_0^\infty\epsilon D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon-\int_0^{\epsilon_F}\epsilon D(\epsilon)d\epsilon  -⑦$$

このとき、低温域($k_BT\ll \epsilon_F$)での電子気体の比熱は以下で表されます。

$$C=\frac{dU}{dT}=\frac{\pi^2}{3}D(\epsilon_F)k_B^2T  -⑧$$$$=\frac{\pi^2}{2}Nk_B\frac{T}{T_F}$$

ここで、$T_F$ はフェルミ温度($=\epsilon_F/k_B$)と呼ばれています。

⑧の導出

⑥に $\epsilon_F$ を掛け、左辺の積分を分けると、

$$\Big(\int_0^{\epsilon_F}+\int_{\epsilon_F}^\infty\Big)\epsilon_FD(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon=\int_0^{\epsilon_F}\epsilon_FD(\epsilon)d\epsilon$$

この式を⑦の右辺に代入して整理すると、

$$\Delta U=\int_{\epsilon_F}^\infty(\epsilon-\epsilon_F)D(\epsilon)f(\epsilon)d\epsilon$$$$+\int_0^{\epsilon_F}(\epsilon_F-\epsilon)D(\epsilon)[1-f(\epsilon)]d\epsilon$$

従って比熱は、

$$C=\frac{dU}{dT}=\int_0^\infty(\epsilon-\epsilon_F)D(\epsilon)\frac{df}{dT}d\epsilon$$$$\cong D(\epsilon_F)\int_0^\infty(\epsilon-\epsilon_F)\frac{df}{dT}d\epsilon$$

最後は、$df/dT$ はフェルミ面の付近で大きな値を持つため、$D(\epsilon)\cong D(\epsilon_F)$ としています。フェルミ・ディラック分布より、

$$f(\epsilon)=\frac{1}{e^{(\epsilon-\mu)/k_BT}+1}$$

ここで、化学ポテンシャルを $\mu=\epsilon_F$ と置いて、$x\equiv(\epsilon-\epsilon_F)/k_BT$ で書き換えると、

$$C=k_B^2TD(\epsilon_F)\int_{-\epsilon_F/k_BT}^\infty\frac{x^2e^x}{(e^x+1)^2}dx$$$$\cong k_B^2TD(\epsilon_F)\int_{-\infty}^\infty\frac{x^2e^x}{(e^x+1)^2}dx$$

この積分の部分は $\pi^2/3$ となるため、⑧が得られます。

 

物理学
力学、電磁気学、相対論、熱・統計力学、量子力学、物性論、電子工学、プラズマ物理、連続体力学、場の量子論、弦理論
散策路TOP
数学、応用数学、古典物理、量子力学、物性論、電子工学、IT、力学、電磁気学、熱・統計力学、連続体力学、解析学、代数学、幾何学、統計学、論理・基礎論、プラズマ物理、量子コンピュータ、情報・暗号、機械学習、金融・ゲーム理論

 

タイトルとURLをコピーしました