化学反応式
反応熱
反応熱の種類には以下のものがあります。
- 反応熱:化学反応に伴って出入りする熱量。
- 生成熱:化合物1モルを成分元素から生成するときの反応熱。
- 溶解熱:溶質1モルが溶媒(水)に溶けるときの反応熱。
- 中和熱:酸と塩基の水溶液の中で水1モルが生じるときの反応熱。
ヘスの法則
ヘスの法則(総熱量保存の法則)は、物質の最初の状態と最後の状態が決まっていれば、途中の反応経路に関わらず、出入りする熱量の総和は一定であることを示します。ヘスの法則には、2通りの計算方法があります。
- 反応熱 = 生成物の生成熱の和 - 反応物の生成熱の和
- 反応熱 = 生成物の結合エネルギーの和 - 反応物の結合エネルギーの和
反応速度
反応速度 $v$ は、単位時間当たりの反応物の濃度の減少、または反応物の濃度の増加で表します。反応物 $A$ の濃度を $[A]$ 、生成物 $B$ の濃度を $[B]$ とすると、反応速度は以下で定義されます。
$$A\to B$$$$v=-\frac{\Delta [A]}{\Delta t}=\frac{\Delta [B]}{\Delta t}$$
ルシャトリエの法則
可逆反応が平衡状態であるとき、濃度・圧力・温度を変えると、その影響を打ち消す方向に平衡が移動し、再び新しい平衡状態になります。
- 濃度
反応物の濃度を増すと、正反応の方向に移動。
生成物の濃度を増すと、逆反応の方向に移動。 - 圧力
加圧すると分子数(体積)の減少方向に移動。
減圧すると分子数(体積)の増圧方向に移動。 - 温度
温度上げると吸熱反応の方向に移動。
温度下げると発熱反応の方向に移動。
集団作用の法則
可逆反応が平衡状態にあるとき、反応物と生成熱のモル濃度には以下の関係があります。ここで $K$ は平衡定数で、一般には温度や圧力の関数となります。
$$aA+bB\leftrightarrow cC+dD$$
$$\frac{[C]^c[D]^d}{[A]^a[B]^b}=K$$
酸と塩基の反応
酸と塩基
酸と塩基の定義は以下になります。
- 酸の定義:
$\mathrm{H^+}$ を他に与える物質 - 塩基の定義:
$\mathrm{H^+}$ を他から受取る物質(水に溶けて $\mathrm{OH^-}$ を生じる物質) - 酸の価数:
酸1分子が放出することのできる水素イオン $\mathrm{H^+}$ の数 - 塩基の価数:
塩基1分子が受け取ることのできる水素イオン $\mathrm{H^+}$ の数 - 電離度の定義:
$$\mbox{電離度}=\frac{\mbox{電離した電解質の物質量(モル数)}}{\mbox{溶かした電解質の物質量(モル数)}}$$
中和反応
中和の公式は、価数を $a$ 、 $b$ 、モル濃度を $c$ 、 $c’$ 、体積を $V$ 、 $V’$ とすると以下で表されます。
酸から生じるの $\mathrm{H^+}$ 物質量 = 塩基から生じる $\mathrm{OH^-}$ の物質量
$$ac\times\frac{V}{1000}=bc’\times\frac{V’}{1000}$$
酸化還元反応
酸化と還元
- 酸化の定義:
狭義:酸素と化合する変化($\mathrm{C\to CO_2}$)または、水素を失い変化($\mathrm{H_2S\to S}$)
広義:電子を失う変化($\mathrm{Zn\to Zn^{2+}+2e^-}$) - 還元の定義:
狭義:酸素を失う変化($\mathrm{CuO\to Cu}$)または、水素と化合する変化($\mathrm{Cl_2\to HCl}$)
広義:電子を得る変化($\mathrm{2H^++2e^-\to H_2}$) - 酸化数:
イオンの電荷に等しく、化合物中の原子の酸化数は酸素 $\mathrm{O=-2}$ 、水素 $\mathrm{H=+1}$ として決められる。 - 酸化還元反応(=酸化と還元を伴う反応)
ある原子の酸化数が増加すればその原子は酸化されたという
ある原子の酸化数が減少すればその原子は還元されたという
酸化剤と還元剤
- 酸化剤:他の物質を酸化し、自身は還元される
- 還元剤:他の物質を還元し、自身は酸化される
代表的な酸化剤は以下になります。
- オゾン:
$\mathrm{O_3+2H^++2e^-\to O_2+H_2O}$ - 過酸化水素:
$\mathrm{H_2O_2+2H^++2e^-\to2H_2O}$ - 過マンガン酸カリウム:
$\mathrm{MnO_4^-+8H^++5e^-\to Mn^{2+}+4H_2O}$
代表的な酸化剤は以下になります。
- ナトリウム:
$\mathrm{Na\to Na^++e^-}$ - 過酸化水素:
$\mathrm{H_2O_2\to O_2+2H^++2e^-}$ - 硫黄水素:
$\mathrm{H_2S\to S+2H^++2e^-}$
イオン化係数
イオン化係数とは、金属が水溶液中で陽イオンになろうとする性質です。下記の表では、イオン化傾向は左ほど大きく、右ほど小さくなります。
反応物 | K | Ca | Na | Mg | Al | Zn | Fe | Ni | Sn | Pb | H2 | Cu | Hg | Ag | Pt | Au |
空気 | 内部まで酸化 | 表面に酸化被膜 | 酸化されない | |||||||||||||
水 | 常温で反応 | 高温水蒸気と反応 | 反応しない | |||||||||||||
酸 | 塩酸や希硫酸と反応し水素を発生 | 硫酸と反応 | 王水と反応 |
電池
電池とは、イオン化傾向の異なる2種類の金属を電解質水溶液に浸すと、イオン化傾向の大きい金属が負極、イオン化傾向の小さい金属が正極となります。主な電池は以下になります。
- ボルタ電池[$\ominus\mathrm{Zn|H_2SO_4|Cu}\oplus$]
正極(還元):$\mathrm{2H^++2e^-\to H_2}$
負極(酸化):$\mathrm{Zn\to Zn^{2+}+2e^-}$ - ダニエル電池[$\ominus\mathrm{Zn|ZnSO_4|CuSO_4|Cu}\oplus$]
正極(還元):$\mathrm{Cu^{2+}+2e^-\to Cu}$
負極(酸化):$\mathrm{Zn\to Zn^{2+}+2e^-}$ - 鉛蓄電池[$\ominus\mathrm{Pb|H_2SO_4|PbO_2}\oplus$]
正極(還元):$\mathrm{PbO_2+4H^++2e^-+SO_4^{2-}\to PbSO_4+2H_2O}$
負極(酸化):$\mathrm{Pb+SO_4^{2-}\to PbSO_4+2e^-}$
電気分解
電気分解とは、電解質水溶液に外部から直流電圧をかけると、各電極で酸化還元反応が起こる現象です。水酸ナトリウム溶液($\mathrm{NaOH}$)の場合、各電極で以下のような反応が起こります。
- 陽極(電池の正極):酸化反応(電子を放出する反応)
$\mathrm{4OH^-\to 2H_2O+O_2\uparrow+4e^-}$ - 陰極(電池の負極):還元反応(電子を受け取る反応)
$\mathrm{2H_2O+2e^-\to H_2\uparrow+2OH^-}$
ファラデーの電気分解の法則とは、陰極で消費される電気量と陽極で発生する電気量は等しいとするものです。

