重ね合わせの原理とは

/量子力学

重ね合わせの原理とは

重ね合わせの原理とは、ある粒子(量子)の状態が、複数の独立で排他的な状態(固有値)の重ね合わせで表されることです。観測した場合は、どれか1つの固有値のみ観測され、これを「波束の収縮」と呼びます。

重ね合わせの状態は、単に「観測される前だから人間が知らない」のではなく、本質的に「確定していない」状態です。このことは2重スリット実験としても有名ですが、以下は干渉計の実験で説明します。

古典的な光の干渉

古典論としては光(以下、光波)は、波長・周波数・位相・振幅など、波としての性質を持ち、干渉など波動特有の現象を起こします。

光波の干渉実験は、鏡と半透鏡を使って行います。鏡は光波を反射するときに光波の位相(波長)が1/2遅れます。半透鏡は光波を半分透過(振幅は $1/\sqrt{2}$ )し、半分反射(振幅は $1/\sqrt{2}$ )しますが、反射の時のみ光波の位相が1/4遅れます。半透鏡1で2つに分けられた光波は、半透鏡2で干渉を起こします。

このとき、鏡Aを通る経路(経路A)と鏡Bを通る経路(経路B)の距離は同一に設定し、位相のずれは鏡と半透鏡の反射でのみ発生するとします。光波の特徴として、位相が合った光波同士は強め合い、位相が1/2ずれた光波同士は弱め合います。光波の経路は4通りあり、それらの位相の遅れは以下になります。

  • 経路A→C:位相の遅れは3/4(半透鏡1で0+鏡Aで1/2+半透鏡2で1/4)
  • 経路A→D:位相の遅れは1/2(半透鏡1で0+鏡Aで1/2+半透鏡2で0)
  • 経路B→C:位相の遅れは3/4(半透鏡1で1/4+鏡Bで1/2+半透鏡2で0)
  • 経路B→D:位相の遅れは1 (半透鏡1で1/4+鏡Bで1/2+半透鏡2で1/4)

以上より、位相の合うCは強め合い、位相が半分ずれるDは弱め合います。実際に実験を行うと、Cからは元の強さの光波が出力され、Dからは光波は出てきません。

重ね合わせの状態

光波の強さを極限まで弱めて、光子1個の状態にします。半透鏡の場合は、通過する光子が1/2、反射する光子が1/2の確率で現れます。

干渉計にすると、光子は常にCから出力され、Dからは出力されません。この結果は、先の古典的な光波の結果と一致します。

しかし、これは奇妙な現象です。というのも、1個の光子は半透鏡1により、必ず経路Aか経路Bのどちらか一方を選択しているはずです。そして、その光子は半透鏡2で、透過か反射が1/2の確率で発生します。つまり、光子は、CとDのそれぞれから1/2の確率で出力されるはずです。

実際はそうはなりません。光子は常にCのみから出力され、Dからは出てきません。これは、以下のように確率波の概念によって考えます。

半透鏡1で、通過する確率波と反射する確率波に分かれます。確率波は、半透鏡を反射したときに位相が1/4遅れ、鏡を反射したときに位相が1/2遅れます。そして半透鏡2で、位相の合う確率波同士は強め合い(C)、位相が半分ずれる確率波同士は弱め合います(D)。位相と干渉の関係は古典的な光波と同じです。

つまり、1個の光子は経路Aと経路Bの2つの確率波の重ね合わせの状態として存在しているのです。

重ね合わせの破壊

この確率波の重ね合わせの状態は、観測することができません。観測すると、この確率波の重ね合わせの状態は破壊されます。これを、デコヒーレントと呼びます。

経路Aに検出器を置き、これにより光子を観測します。そうすると、検出器では1/2の確率で光子が検出されるようになります。そして、CとDでは残り1/2の半分、つまり1/4の確率で光子が観測されるようになります。

しかし、これも奇妙な現象です。経路Bを通る光子は、経路Aに検出器があることを知りません。にも係わらず、Dからも光子が出力される(経路Aの検出器の存在が分かる)のです。つまり、1/2の確率で、検出器に光子が当たることなく、検出器の存在を知ることができます。

検出器を置く(光子がどちらの経路を通るかを知る)ことで、確率波の重ね合わせの状態は破壊され、経路Aか経路Bかのどちらかの状態が確定(波束が収縮)するのです。そして、この波束の収縮は光速よりも速く、ほぼ瞬間的に伝わることが確認されています。

 

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