相対性理論(以下、相対論)とは、互いに運動する座標系(観測者)から見ても、物理学の法則は変わらないとする原理(考え方)です。相対論には以下の3つがあります。
ガリレイの相対論
ガリレイの相対論とは、慣性系(力の働かない等速運動を行う座標系)の間で成り立つ変換法則です。この変換をガリレイ変換と言います。
例えば、$x$ 軸を”西→東”にとり、$y$ 軸を”南→北”にとります。止まっているA君の傍を、B君が東($x$ 軸のプラス方向)に一定速度 $V$ で通り過ぎるとします。その時、A君はB君が「速度 $V$ で東に移動した」と言いますが、逆にB君はA君が「速度 $V$ で西に移動した」ように見えるでしょう。
A君の座標を($x,y$)、B君の座標を($x’,y’$)すると、両者のガリレイ変換は以下になります。B君はA君が「速度” $-V$ “で東に移動した」ように”相対的”に見えるのです。
$$x’=x-tV , y’=y , t’=t$$
また、ガリレイ変換により速度の加算が可能になります。例えば、時速100kmでボールを投げる人が、時速50kmで走るトラックに乗って進行方向にボールを投げると、投げた人にとっては時速50kmのボールが、止まっている人からは時速150kmに見えます。
ニュートンの運動方程式は、ガリレイ変換に対して不変に保たれます。これは、ニュートンの運動方程式が2階微分を含むためです。しかし、マクスウェル方程式は、不変には保たれません。
特殊相対論
特殊相対論とは、以下の2つの原理に基づいて、アインシュタインが1905年に発表しました。
- 特殊相対性原理
- 光速度不変の原理
特殊相対性原理とは、全ての慣性系において物理学の法則は変わらないとする原理です。これは、ガリレイの相対論と変わりません。特殊相対論にはもう1つ、光速度不変の原理が付け加わりました。
19世紀後半に、光の速度を測る実験が行われていました。その際、ガリレイ変換の速度の加算の考え方と同じように、光源の進行方向に発した光の速度は速くなる(逆方向は遅くなる)ことが予想されました。しかし、マイケルソン・モーリーの実験では予想に反し、”光の速度は不変”という結論になったのです。
ローレンツは1899年、この実験結果に基づき、新しい変換法則を発表しました。これを、ローレンツ変換と言います。このローレンツ変換は、マクスウェル方程式を不変に保つことが証明されてます。尚、ニュートンの運動方程式は不変ではありませんが、ローレンツ変換を満たす相対論的力学として拡張されました。
アインシュタイン自身はマイケルソン・モーリーの実験を知らなかったようですが、彼の思考実験により光速度が不変であることに気付いたようです。そして、ローレンツとは独立に、ローレンツ変換を導いたとされています。
一般相対論
アインシュタイン自身は特殊相対論には不満を持っていました。それは、特殊相対論は慣性系という”特殊”な条件でのみ成り立つ理論だからです。そのため、アインシュタインは1915~1916年に、以下の2つの原理に基づく一般相対論を発表しました。
- 一般相対性原理(一般共変性原理)
- 等価原理
一般相対性原理とは、全ての座標系において物理学の法則は変わらないとする原理です。全ての座標系とは、慣性系の他、加速度系なども全て含めることになります。そのため数学的には、全ての物理法則はテンソル形式で記述する必要があります。
等価原理とは、慣性質量と重力質量が同一であることを表しています。慣性質量とはニュートンの運動方程式($F=ma$)の力 $F$ に抗する質量 $m$ で、重力質量とは重力に引っ張られる力($F=mg$)に比例する質量 $m$ です。言い換えると、地上に落下する物体の速度は、その質量に依らず一定であると言うことができます。
また、等価原理は、運動の加速度と重力加速度は区別できないと言うこともできます。例えば、閉鎖された部屋の中で重力加速度 $g$ を感じている場合、それが地球の重力によるものか、加速度運動によるものか区別的ないというものです。